あたしが18歳になった日は福岡でライブで。
 そのあともお互い忙しくてなかなか会えなくて。
 だから今日、お互い早く仕事が終わったので遅ればせながら二人で誕生パーティーをすることにした。



  禁断の果実



「あっ、なっち! これも買おうよ〜!!」
「ご、ごっちん! 『なっち』なんて呼んじゃだめだべ!」

 今はなっちと一緒にスーパーで材料の買い出し中。
 あたしはなっちの持っている買い物かごに食べたいものをポイポイっと入れていく。
 結局時間もないため、なっちの家で焼き肉パーティーをすることにした。

「だいじょぶだよ〜、みんな気づいてないじゃん!」
「だめだべ! せっかくのプライベートなんだから邪魔されたくないっしょ?」
「むぅ……」
「ねっ! 家に帰ったら好きなだけ呼んでいいから。わかった?」
「はぁい」
「よし、いいこいいこ」

 笑顔でそっと頭を撫でてくれるなっちはやっぱりお姉さんって感じで。
 18になったっていってもあたしはなっちの前ではまだまだ子供。
 でもいいや。こういう子供っぽいのもあたしの一部だし。
 なっちの前では包み隠さないあたしでいたいから。

「これだけ買えば十分っしょ。そろそろ帰ろうか?」
「うん!」


 家に帰ったらさっそくパーティーの用意。
 あたしは材料を切り分けて、なっちはホットプレートを熱したり、ジュースをグラスについだりしている。

「なっち、できたよ〜!」
「こっちもOKだべ! じゃ、はじめようか」
「お〜!」
 切り分けた材料を持っていき、なっちと向かい合ってテーブルに着く。

「それじゃぁ、ちょっと遅いけどごっちん誕生日おめでと〜!!」
「ありがと〜!」
「かんぱーい!」
「かんぱいべいべ〜!」
 ジュースの入ったグラスをカチンとあわせる。
 口に含むとほんのりと甘い味が広がった。

「なっち、肉焼いてよ〜」
「もう、今日だけだからね」


 そのあとは二人で食事を楽しみ、たくさん買ってきた材料はすぐになくなった。
 材料がなくなり、後かたづけもだいたい終わると、なっちはキッチンからリンゴと果物ナイフを持ってきた。

「へぇ〜、リンゴもう出たんだ〜」
「うん、お母さんが送ってくれたんだべ。剥いてあげるね?」
「わーい、ありがとなっちー!」
「キャ! ナイフ持ってるときに抱きついちゃだめだべ! 危ないっしょ!」

 なっちがシャリシャリと朱い皮を剥いていくと、白い中身が見えてくる。
 なっちは剥いたリンゴを4等分にし、しんをとってから食べやすいように更に2つに切り分けた。

「はいごっちん、剥き終わったよ」
「あーん」
「もう、18になったっていっても中身は子供だねぇ」
「むぅ、なっちだって中身は大人だけど外見は子供じゃん」
「あっ! そんなこと言っちゃう子にはもうあげません!」
 なっちは持ってたリンゴを自分の口に放り込み、更にリンゴの乗ったお皿を取り上げた。

「ゴメン、なっちぃ。だからリンゴちょーだい!」
「ダメ! 悪い子にはオシオキ!」
「むぅ……。じゃあいいや、味だけちょうだい?」
「えっ?……んっ!」
「んっ……」
 18歳になってからの初めてのキスはリンゴ独特の甘くて酸っぱい、だけどあまぁいキスだった。

「……もう…いきなりはダメっしょ?」
 あたしの腕の中で真っ赤になってるなっち。可愛い〜!
「ねぇなっち、リンゴ」
「……ダメ……」
「じゃ、また味だけもらう」
「わ、わかった、あげる!」
 お皿の上に乗ったリンゴを一切れつかみ、あたしの口に入れてくれた。
 さっきより強い甘味と酸味が同時に口の中に広がった。

「ねぇ、ごっちん」
「んっ?」
「今度はなっちにも味だけちょうだい?」
「んっ、わかった」
 おやすいごよーさ!
 そっとなっちの頬を包み込む。
 なっちが目を閉じたのを確認すると、そのままそっと口付けた。


「そうだ、リンゴのジュースも買ってきたんだよ」
「ふぅん、今日はリンゴ尽くしだねぇ」
 なっちが剥いてくれたリンゴを頬張っているとプシュッと缶の開く音がした。

 ぱくぱくと食べているとリンゴはすぐになくなってしまった。
 もう一個持ってこようかな? と立ち上がろうとしたところ、背後からなっちの腕が絡みついてきた。
「なっち?」
「んふふ〜、ごっちん、好き〜」
「な、なっち?」
 そのままあたしの体にもたれかかってくるなっち。
 ど、どしたの? なっち……。なんかいつもより声が艶っぽいよ?
 もしかして誘ってる?

 ちょっと見たなっちの顔はふにゃふにゃーとした笑顔で。
 ……なんか嫌な予感がする……。
 なっちは前に回された手にしっかりと空き缶を握っていた。
 ちょっと見てみると、そこにはリンゴの写真といっしょに、はっきり「アップルサワー リキュール類・アルコール分8%」と書かれていた。

「ってなっち! これジュースじゃなくてお酒じゃん!!」
 たしかなっちお酒は弱いんじゃ……?
「ん〜、まだあるよ〜、ごっちんも飲めばぁ? 美味しいよ、このジュース〜」
「だからお酒だって! なっち酔ってる?」
「酔ってるわけないじゃ〜ん。ホラ、ごっちんも飲もうよ〜」
 そういってなっちはもう一本缶を手に取った。
 さっきと同じ銘柄。やっぱりお酒。
 わわっ、なっち完全に酔っぱらってる……。お酒弱すぎ……。
 言ってることもやってることもそこいらの酔っぱらいとかわんないよ……。


「ほらぁ、ごっちんも飲もうよ〜」
「ダメだって! ごとーまだ18になったばっかりなんだから!!」
「んもぉ、何言ってんの〜? あ〜、わかった〜、なっちに飲ませて欲しいんでしょぉ? も〜、ごっちんは甘えただからぁ〜」
 徐々にあたしとの距離をつめてくるなっちは目がトロンとしていて、顔が少し赤い。
 か、完全にできあがってる……。

 なっちは缶のタブを開けると中身をキューッとあおった。
 あり? 結局なっちが飲むの?
「……ってまさか、この展開って……」


 気づいたときには遅かった。
 なっちはあたしの方に覆い被さってきて、あたしはそのまま床に倒される。
 そしてなっちの唇があたしの唇に触れると同時に、口の中に炭酸の混じった少し甘い液体が流れ込んできた。

「んっ…んっ……!」
 なっちは唇を離してくれず、仕方なくあたしはアップルサワーを飲み込む。
 うわわ……初めてお酒飲んじゃったぁ〜!! こんなとこで大人になりたくないよぉ〜!

 なっちはあたしに覆い被さったまま、またアップルサワーを口に含むと唇を寄せてきた。
 またなっちの口から流れ込んでくるアップルサワーを飲み込む。
 なんだかだんだん顔が熱くなってきた。


「んふふ〜、どう、ごっちん? 大人の味でしょ〜?」
「大人の味って……なっちだって全然飲めないじゃん!」
 どうにか起きあがろうとするけどなんだか力が入らない。
 あ〜、あたしもお酒弱いのなぁ……居酒屋の娘なのに……。


 なっちはあたしの口から零れたアップルサワーをそっと舐めとってくれて。
 そしてそのまま顔中にキスの雨が降らされた。
 なんかいつもと立場逆だなぁ。
 そんなことを考えながらもあたしはそっとなっちを受け入れた。



「なっちだってたまには襲っちゃうんだからねぇ〜!」
「あはっ、なっちにだったら襲われてもいいやぁ」


 なっちをそっと抱き寄せる。

 どうやら今年の誕生日プレゼントはなっち自身みたい。






あとがき

ごっちん誕生日おめでとう小説!
そして酔いどれなっちに襲われるごっちん。
初☆ごま受けです! しかもなちごまで!!
基本はごま攻めのほうが好きなんですけどね。なちごま限定でごま受けもいいかも。
余談ですが管理人はリンゴ大好きです。
「好きな食べ物は?」って聞かれたら「リンゴ!」って即答しちゃうくらい好きです。
甘味と酸味のバランスのちょうど良さが美味しいよねぇ(小説と関係なし!)。

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