「おはようございます。ふぁ〜あ……」

 あくびをしながら楽屋に入る。
 昨日は時間ギリギリまで撮影だったから眠い……。
 でもまぁ、それなりにいいこともあったんだけど……。



  大きなあなた 小さなわたし



「おはよう、れいな!」
「おぅ、おはようミッチー!」
「? ミッチー?」
「や、なんでもない、さゆ」

 さゆに適当に挨拶してソファに座る。
 そこでもう一回大きなあくび。
 さゆもあたしの隣に腰を下ろす。

「れいなは昨日二人ゴトの撮影だっけ?」
「うん、そう」
「後藤さんとデートだっけ?」
「そう。メアド交換しちゃった〜!」

 撮影が終わって家に帰ったあともちょっとメールのやりとりとかしちゃって。
 おかげで今日睡眠不足なわけなんですけど……。

「どうだったの、デート?」
「そうだよれいな、オイラにも教えろ!」
「!? やぐっつぁん!? いつからそこに!?」

 急にソファの後ろから現れたやぐっつぁんが背中にもたれかかってきた。
 いつの間に!? 小さくて見逃してた!?
 そんなこと言ったら「お前だって十分小さいじゃねぇか!」って言われちゃいそうだけど……。

「ごっつぁんと一緒になにしたんだよー! 教えろよー!!」
「別に……一緒にゲームセンターで遊んだり、花火したり……」
「ふーん、けっこう楽しそうじゃない」
「あとは……あぁ、観覧車乗りました」

 あたしとしては普通に言ったつもりだったんだけど……
 その瞬間、楽屋内の時が止まった。


「えっ? ちょ、やぐっつぁん……?」
「……はぁー!? ごっつぁんと観覧車乗ったー!?」

 やぐっつぁんの叫びと同時にメンバーみんながあたしのまわりに駆けよってきた。
 ていうか何、なにー!? あたしなんかしましたか!?


「れいな……後藤さんと観覧車乗っちゃったの……?」

 ポンちゃん、なんで涙目なんですか……?

「ごっちん……ロリコンだったとは……」

 藤本さん、なんか大変失礼なこと言ってませんか?

「へぇ〜、ごっちんがねぇ! ほぉ〜、ふ〜ん……」

 吉澤さん、目がコントの『悪魔』の目つきになってます……。


「ぁ、あの〜、れいななんかしましたか……?」
「……ていうかれいな、『99の後藤真希』読んでないのかよ!?」

 『99の後藤真希』って……確か後藤さんのエッセイだっけ……?
 家にあるけど……

「か、買ったんですけどまだ1/3くらいしか読んでなくて……」
「ハァ? あぁ、もう、話にならーん!! いいか、今日帰ったら絶対に全部読め!!」
「はぁ……?」


 その日の夜。
 収録を終えて帰宅したあたしは、矢口さんに言われたとおりに『99の後藤真希』を開き……
 今度はあたしの時間が確実に止まった……。


「ご、後藤さんっ!!」
「んあっ?」

 翌日、あたしは朝イチで後藤さんの楽屋に飛び込んだ。
 後藤さんは急に飛び込んできたあたしに慌てるでもなく、平然とソファに座って雑誌を開いている。

「何? どうしたの、れいな?」
「えっ……?」

 れいな?
 れいなって呼んでくれた?
 おとといは「田中ちゃん」だったのに……。

 舞い上がりそうになるけど、でもそんな場合じゃなくて……。


「ぁ、あのっ……えっと……すいませんっ!!」
「はっ?」

 なんと切り出したらいいかわからなくてとりあえず謝ってみたけど、やっぱり後藤さんは不思議そうな表情をしていて。

「あの……観覧車……」
「あ〜、楽しかったよねぇ!」

 そ、そうじゃなくて……

「えーと……『99の後藤真希』読んで……」
「……あぁ!」

 後藤さんはようやく理解してくれたみたい。
 雑誌をパタンと閉じて、いまだに扉の前で立ちつくしているあたしのもとへとやってくる。


「すいません! 後藤さんが観覧車にあんなに思い入れがあるなんてれいな知らなくて……それで一人ではしゃいじゃって……」

 まくし立てるけど唇にそっと後藤さんの指が添えられてストップ。
 指の向こうでは後藤さんが優雅に微笑んでいる。

「そんなことないよ、ごとーも楽しかったし。そりゃ確かにごとーも企画を聞いたときはびっくりしたんだけどさぁ……。ん〜、でも……相手がれいなだったから……いいかなぁ、って……」
「……えっ?」

 言ってるうちに後藤さんは目をそらし、頬を指でぽりぽりと掻いた。
 その頬はうっすらとピンク色に染まっている。
 あたしは言われたことを理解するまで数十秒要した。

「意味……わかるよね?」
「えっと……」

 これってやっぱり……そういうことですよね?


「わかり…ますけど……」
「あはっ! よかった」
「ぅわっ!?」

 一瞬のうちに後藤さんに抱きしめられた。
 ちっちゃなあたしをギュッと包みこんでしまう大きな包容力。

 閉じこめられた後藤さんの胸の中はあったかかったけど、心臓の音がドキドキと響いてきて。
 後藤さん、緊張してるんだ……。

 あたしもおずおずと手を後藤さんの背中にまわして……
 ギュッと後藤さんの身体に抱きつく。
 ……しばらくこうしてても……いいですよね?


「……ねぇ」

 そのまま後藤さんの腕の中に収まっていると、上から声が降ってきた。
 顔だけを上げると後藤さんとばっちり目が合う。

「れいなは? れいなはごとーのことどう想ってるの?」

 後藤さんの顔は余裕たっぷりに笑っていて。
 もう心臓もゆっくりペースを刻んでいる。
 わかってるくせに……。

 ずっとずっと見てました。
 最初は憧れだったかもしれない。いや、今も「憧れじゃないの?」って言われたらちょっと自信ないけど……。
 でもでも、「憧れ」もひっくるめて、やっぱりあたしは後藤さんのことが……


 またギュッと抱きついて、顔を後藤さんの身体に密着させる。
 そのままで少しだけ口を開いた。



「……好きです」






あとがき

♪ れなごま書きました(書いちゃった!)
というわけでまた未知なるCPを開拓中です。
れなごま、とりあえずはこんな感じかなぁ、と。

しかし最近はれなこんとかれなごまとか、本当にれいなにはまってますねぇ。
そこ、炉とか言わないっ!!

( ´ Д `)<戻るよ〜!