LIKE A CAT


「んっ? んぅ……」
 まぶしくて目を覚ました久々の休日。窓のほうを見てみるとすっかり夜は明けて朝日が差し込んできている。
 ボーっとしたまま枕元の目覚まし時計を見ようとしたけど……
「? あれっ?」
 意識ははっきりしているのに、なぜか体が動かない。しかもなんか体に重みを感じるし……。
 まさか金縛り?
 そう思って前を向くと……

「おはよう、ミキティ!」
 目の前に突然愛しい恋人の顔が現れた。
 となりで寝ていたはずのごっちんはなぜかアタシの上にのしかかっていて、アタシの顔を超至近距離から覗き込んでる。いつもはねぼすけさんなのに今日は珍しくアタシよりも早く起きてるし……。

「ぉぁょぅ、ごっちん……」

 とはいえこんなに間近にごっちんの顔があると……
 ……キスしたくなっちゃうよ……

 どうやらごっちんも同じことを思ったらしく、ごっちんの手がアタシの頬に優しく触れると同時に唇が重なった。
 それによって一気に頭が覚醒する。


「んふっ、ミキティは可愛いなぁ!」
 唇が離れると同時に頬に触れてたごっちんの手がアタシの頭を撫でる。
「か、可愛いって……」
「違うよ〜、『にゃ〜!』って言ってよ!」
「はあっ!?」

 ごっちんは時々わけのわからないことを言う人だけど、今回のもアタシには全くわけわからない。
 なぜに『にゃ〜!』……?


 その時気づいた。さっき撫でられた頭に変な違和感がある。
 なんかヘアバンドみたいなのがしてあるような感覚。
 そっと頭に手を伸ばすと、予想に反してそれにはフワフワとした……飾り? がついていた。
 ……なにこれ?

 しばらくそれを両手で触っていたけど……
 あれっ? ちょっと待って……以前似たようなものをつけた記憶が……。
 確かあれは某番組の番宣で、ついでにアタシたちの映画の宣伝もしたCMの撮影の時……。


 アタシは上に覆い被さっていたごっちんを押しのけてガバッと起きあがった。
 手を伸ばし、机の上に置いてあった鏡を取る。
 ま さ か……

 鏡に映ったのは猫耳がはえたアタシの顔だった。


「な、なにこれぇ!!」
「猫耳ヘアバンド! 見てわかんない?」
「そうじゃなくて、なんでこんなもん!?」
「梨華ちゃんにもらったの! ミキティは猫も似合うんじゃないかなぁ、って思って! 予想通り可愛いよ♪ ほら!」

 ごっちんはアタシから鏡を奪うと目の前に携帯電話を突き付けてきた。
 その画面の中では猫耳付きのアタシが気持ちよさそうに眠っている。

「なに撮ってんのーっ!!」
「あまりにも可愛いから待受け画面にしちゃった〜!」
「お願い、消してー!!」
 ごっちんの手から携帯を取り上げようとしつつ、もう片方の手で猫耳も外そうとしたけど一瞬早くごっちんの手がアタシの両手首を押さえ、アタシはそのまままたベッドに倒されてしまった。

「ちょっと、ごっちん! これ外させてよ!」
「ダ〜メ! まだ『にゃ〜!』って言ってないじゃん!」
「マ、マジで言うの……?」
 ごっちんは深〜く深〜く頷いた。ジタバタ足掻いてみるけどけどごっちんの力には敵わない……。

 うぅ……とっても恥ずかしいんだけど……
 でもごっちんはアタシの手首をしっかりと押さえていて、言わないと離してくれなそう……。


「……にゃー……」
 観念して言った瞬間に顔が熱くなる。対照的に目の前にあるごっちんの顔は笑顔に。

「も一回!」
「にゃー! もうっ、言ったんだから外させてよ!」
「あはっ、ミキティ可愛い〜!!」
「うわっ! ちょっとぉ!!」
 またごっちんの顔がせまってきた。
 そしてまた唇が重なったけど、今回はさっきのとはちょっと違って……
 ていうかアタシは……このままなの?

「んっ! ちょ、ごっちん!」
「もうっ! 『にゃ〜!』でしょ!」
「にゃ〜!……じゃなくって! 手ぇ離してよ〜!」
「あはっ! 可愛いぃ! 可愛すぎるっ!!」
「お願いだからミキの話聞いてー!」
「ミキティが似合いすぎて可愛すぎるのがいけないんだよ? じゃ、いただきま〜す♪」
「ぇえっ、朝からぁ!? ていうか、マジでこのままぁ!?」


 そのあと結局アタシはごっちんの朝食代わりにされてしまって……。
 で、そのごっちんはといえばアタシのとなりでまた安らかに寝息をたてている。


 アタシはようやく猫耳ヘアバンドを外してまじまじとながめてみた。
 でも人間ってのは時に思いがけない行動に出るもんで。
 無意識のうちにアタシの手はなぜかその猫耳ヘアバンドを寝ているごっちんに装着し始めた。

 うっ……か、可愛い……。
 ごっちんは気まぐれでプライドが高くて、でも見てるとほんわかしてて癒される。
 なぁんか猫に似てるかも。アタシよりも猫耳似合ってるんじゃん?


 そんな猫耳ごっちんをしばらく見てたけど、不意に睡魔が襲ってきた。
 もう一回寝ようかな、と思ったけどせっかくだからアタシも写真撮っとこうかな?
 アタシはごっちんを起こさないようにそっと自分の携帯電話に手を伸ばした。

  カシャッ!

 でも最近のカメラ付き携帯は音が出るようになっていて。
「……んっ?」
 どうやらその音に反応してごっちんが起きたみたい。まだ眠そうな目をコシコシとこすっている。
 あっ、その仕草なんかホントに猫みたい。可愛いぃ!

 さて目覚めたごっちんを眺めていると……
 まずアタシの顔をじーっと見て。
 そのあと周囲を見回して。
 そして自分の頭を触って、装着された猫耳を発見したようだ。

 猫耳に気づいたごっちんはどんな反応をするかな?
 その反応を楽しみに待っていると……


「あはっ!」
 ごっちんは寝ぼけ顔から急に笑顔になった。そしてその次には……
「にゃ〜!!!」
「うわっ!?」
 猫耳をつけたまま、アタシに飛びついてきた。
 受けとめきれずにまたもやベッドに倒れる。
 つーか自分から!? 恥ずかしがらないの!?


「ちょ、ごっちーん!」
「にゃん?」
「いや、『にゃん?』じゃなくて!」
「だって今ごとーは猫だも〜ん! だからご主人様に甘えるにゃ〜!」
「『甘える』じゃなくて『襲いかかってる』じゃんっ!」
「細かいことは気にしないのニャ〜!」

 ごっちんがアタシに覆い被さってきて、唇をペロッと舐められた。
 キスとはまた違った感触で、なんか変な感じ。
 ていうか……アタシが猫耳つけてもごっちんが猫耳つけても、それ以外は結局変わらないんだなぁ……。

「ミキティ」
「んっ?」
「だいすきニャ!」
「へっ!?」
 思わずごっちんを見上げると、ごっちんは満面の笑顔でアタシの目を覗き込んでいる。
 はぁ、まったく……この笑顔(ついでに今日は猫耳つき)にはかなわないよ……。

 力を抜き、そっと手を伸ばしてごっちんの頬を包み込む。
「ミキも大好き!」

 ごっちんの顔を引き寄せると肩越しに見えてた天井がだんだんと見えなくなって、

 完全に見えなくなったとき、今度はアタシの唇にいつもの柔らかさが触れた。






― 翌日 ―
「ごっちーん、今日松浦携帯忘れちゃってさぁ! ちょっとかしてくれない?」
「だ、だめっ!」
「じゃあみきたんかして!」
「む、無理っ!!」
「なんだよぉ、二人してぇ!!」






あとがき

白城さんにささげた(ねこ)ごま(ねこ)みき小説。
思いつきは例の(↓)CMです。ごっちんバージョン是非やってほしかった……。

やっぱり甘々書いてるときは楽しいね!
待受け画像ほしいなぁ(マテ

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