LIKE A CAT2


「うぅ……寒っ!!」
 タクシーを降りたとたん、真冬の風が体に吹き付ける。
 いくら北海道出身っていっても寒いものは寒いわけで。
 さっさとお金を払ってマンションの入り口に入り込んだ。


 自分の部屋の前までやってくる。
 たしか今日はごっちんが来てるはず。
 もう来てるかな? なんて思いながら鍵を開けた。

 扉を開けるとそこから蛍光灯の光があふれてくる。
 と、いうことは……
 期待に胸を弾ませながら中に入る。



「ただいま〜!」

 ……あれっ?
 いつもなら「ミキティ、お帰り〜!」なんて叫んで飛びついてくるってのに……。
 もしかして来てないのかな? アタシ電気消し忘れたか?

 首を捻りつつリビングに入る。
 やっぱりそこも電気が点いてて。
 2ヶ所も消し忘れるなんてないと思うんだけどなぁ……。

 マフラーをとり、コートを脱いでハンガーに掛ける。
 それらをしまうために寝室まで行こうとしたけど……
「あっ! いた♪」
 足が止まった。
 電気を点けた犯人をやっと見つけたから。

 犯人であるごっちんは座布団を枕にし、こたつから顔だけ出して熟睡していた。
 こたつの影になってたから見えなかったんだぁね。


「しっかし……なんとかはコタツで丸くなる、っていうけど……」
 ホントなんだね。
 ごっちんのそばにしゃがみ込み、そっと頭を撫でる。
 ごっちんはくすぐったそうに身をよじるけど、まったく起きる気配はない。


 なんだよぉ、起きてよぉ、せっかく帰ってきたってのに。
 頭を撫でていた手がそっと頬に降りる。

「……キスしたら起きてくれるかなぁ?」
 ちょっと体勢上きついんだけど、
 そっと体をかがめて、寝ているごっちんの唇に自分の唇を合わせた。


「……んっ?」
 ごっちんの唇が微かに動いたことで顔を上げる。
 ごっちんはうっすらと目を開けると、じーっとアタシの顔を見つめてきた。

「……おはよう、ミキティ……」
「おはようって……もう夜だよ?」
「そっか。じゃあこんばんは、ミキティ……」
「……もういいや……」

 いったんコートをしまうためにリビングを出る。
 帰ってくるとごっちんはまだ寝たまま、眠そうに目をこすっていた。
 もう一度ごっちんのそばに腰を下ろす。

「ごっちん、そうしてるとホントに猫みたいだよ」
「んあ〜?」
「コタツで丸くなってさぁ、そうやって目をこすってると」
「なんだよぉ、ミキティだって猫じゃ〜ん」
 目をこすっていた手がこたつの中に入っていって。
 出てきたときには携帯を握っていた。
 ごっちんは携帯をぱかっと開いてアタシに向ける。
 見てみると……

 ゲッ! これは……
 画面に映ってたのは以前撮られたアタシの寝顔、ついでに猫耳つき。だった。
 反射的に取り上げようとしたけど、一瞬早くごっちんが手を引っ込めて、アタシの手は空を切った。

「ホラ、ミキティだって猫じゃん。猫みミキティじゃん」
「変なニックネームつけないでよ! つーかそれまだ持ってたの……?」
「うん。ミキティは持ってないの?」

 ……えーと……
 当然持ってますけど……。
 だってあんな殺人的に可愛い画像消せるわけないじゃん!
 ただ、以前亜弥ちゃんに携帯取られてバッチリ見られて以来、待ち受けにはしてないけど。


 それはそうとアタシもいい加減寒くなってきた。
 アタシも一緒にコタツで丸くなろうかな? 猫ミキになっちゃおうか。
 そっとこたつの中に足を入れるけど……
「んっ?」
 なんかたいして暖かくないんですけど。
 コタツ布団をまくって中を見てみると……真っ暗。

「……ごっちん、こたつついてないじゃん」
「あっれー? たしかつけたはずなんだけど」
「ていうかコンセント入ってないよ?」
「んー、じゃあ寝てる途中に抜いちゃったのかな?」

 どこをどうしたら寝てる途中にコンセントを抜けるのだろう?
 ツッコみたいところはいっぱいあるけど、とりあえずこれでは十分に暖まれない。
 コンセントを入れるため、無精無精立ち上がろうとしたけど、それはごっちんの手で止められた。

「えっ、ごっちん?」
 そのままごっちんにこたつの中に引きずり込まれて。
 混乱しているあいだに今度はごっちんに抱きしめられた。
 ほのかなごっちんの体温が、冷えた身体に伝わってきて心地いい。

「こたつなんかよりもごとーが暖めたげる!」

 ギューッとさらに力が加わる。
 ごっちんのぬくもりは優しくて、温かくて。
 いつもそっと身を委ねてしまう。

 結局アタシもごっちんを抱きしめ、一緒にこたつの中で丸まった。
 そして何回も何回もキスをする。


 それはきっと二匹の仔猫がじゃれ合っているように見えるんだろうな……。



「……ねぇ、ミキティ」
「んっ?」
「あっちでもっとあっためてあげよっか?」

 ごっちんが指さしてるのはさっきアタシがコートをしまいに行った部屋……「寝室」。

 アタシの顔だけが一瞬で熱くなった。







あとがき

家にこたつ出したぞ記念。ついでにCPトーナメントでみきごま予選通ったぞ記念でみきごま〜♪
いや、なんの記念だよ……。
いちおう「LIKE A CAT」の続編のつもり。
ていうかね、また微妙に時期早いじゃんか! しかもあんまり猫になってないし!

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