「た、田中ちゃん……」
「紺野さん……」
ちょっとだけ困った顔で、そしてちょとだけ赤くなっている紺野さん。
そんな紺野さんを抱き寄せ、唇を奪う。
「……んっ……」
時折聞こえてくる艶っぽい声。
何回もキスを交わしながら、体重をかけて体を倒していく。
そっと体を離して覗いた紺野さんの顔は、見るからに真っ赤で。
「あの……痛くしないでね……」
「大丈夫です。優しくしますから……」
今度は紺野さんの首筋に唇を埋める。
そして手は紺野さんのパジャマのボタンを外しにかかる。
「あっ、た、田中ちゃん……」
「"れいな"って呼んでください」
プチップチッとボタンを手際よく外していく。
「れ、れいな……」
「……もう一回」
全部外し終わったので前をはだけさせる。
白い肌に釘付けになる。
「れーな……」
「もう一回」
鎖骨に優しく口付ける。
ホントはキスマークを付けたいところだけどガマンガマン。
そして露わになったふくらみに手を伸ばす……。
「れーなっ!!」
少女マンガのように?
ヒリヒリヒリ……
今日はいつもと逆であたしが頬をさすってちょっと涙目。
でも絵里は「れーなにおヨメに行けないカラダにされたー!!」と、大変人聞きの悪いことを泣き喚いている。
そ、そこまではヤってなか……。
今日はまた地方のコンサート。ついでにいうと昨日はオフ。
なのでどうせなら朝一緒に行こうと、あたしは絵里んちにお泊まり。
オフだといつまでも寝てしまうあたしたちだから、まぁ2人いればどっちかはちゃんと起きるだろう、と。
そういう魂胆で、絵里のベッドで一緒に寝てたんだけど、その甲斐あってちゃんと時間通りに……絵里の強烈なビンタで叩き起こされた……。
「うえーん! ハジメテはさゆにあげるって決めてたのにー!!」
「だからそこまでヤってないでしょ!! ちょっと触っちゃっただけじゃん!!」
パジャマの上からね。パジャマの上から……。
しかし絵里と紺野さんを間違えるなんて……一生の不覚……。
それもこれも昨日の夜、スゴイ少女マンガを持ち出してきた絵里が全部悪い!!
ていうかせっかくイイところだったのに……。
もう一回寝れば続きを見れるかな?
そんなことを考えてみるけど、残念ながらもう支度をしなくちゃいけない時間。
「ほらっ、絵里! 支度しないと……」
「え゛ーん! いくら紺野さんとできないからって絵里で欲求不満を解消するなんてヒドいよー! そりゃあ絵里は可愛いけど……」
「……それ以上言うとホントに襲うよ?」
絵里の耳元でそっと囁くとさすがの絵里も黙り込む。
いや、襲わないけどね。絵里なんかキョーミないし。
絵里がおとなしくなったので、あたしたちはやっと支度を始めた。
「ほ、ホントに襲わない……?」
「だから襲わないって!!」
何もそんなにビクビクしなくても……。
あたしはそんなに怖いのか?
☆
今日のコンサートも無事に終わった。
そしてあたしたちは今日泊まるホテルまでやってきた。
「あーあ、今日はれーなと同室かぁ……」
「こっちのセリフとよ」
今日はあたしと絵里が同室。ちなみに紺野さんはさゆと同じ部屋。
絵里は部屋に入るとすぐに持ってきた私物を広げ始める。
「でもれーなと同室だとまた身の危険を感じちゃう……」
「なんっ!?」
「いや、なんでもない……」
しつこいっつーの!
睨みをきかせて絵里を黙らせる。
紺野さん以外は襲う気ないってば!
そのあとでかわりばんこにシャワーを浴びる。
最初に絵里が入り、続いてあたしが浴び終わって出てくると、絵里はベッドの上に寝ころんでマンガを読んでた。
あっ、昨日読んだスゴイ少女マンガだ……。
あたしも同じようにベッドの上に寝ころぶ。
「れーな、早かったねぇ」
「まーね……」
「そういえばさぁ、れーな、この前は紺野さんと一緒の部屋だったんでしょ? どうだった?」
「……何が?」
絵里はマンガを閉じると、好奇心いっぱいの目で聞いてくる。
少し嫌な予感を感じながらもなんとか答える。
「たとえばぁ、一緒にお風呂入ったとか!」
「入ってないよ!」
「じゃあ思わず覗いちゃったとか!」
「し…て……ない……」
危うくしそうになったけど……。
「じゃあ……もしかして押し倒した?」
「それこそできるわけないでしょ!!」
思わず起きあがって叫ぶと、絵里はそんなあたしを見てクスクス笑う。
もしかしなくてもあたしで遊んでる?……いい度胸だ。
そのまま絵里のベッドに飛び移ると、まだ寝ころんでる絵里を押さえつける。
「そんなに笑いたきゃ、もっと笑えー!!」
「あ、あはははははっ! やめてー、れーなー!!!」
暴れる絵里を押さえつけて脇をくすぐる。
新技、くすぐり攻撃!
なんか絵里にはこっちのほうが効果ありそう。
ひとしきり絵里をくすぐって、気が済んだのでやっと解放してやる。
絵里は乱れた息と衣服を整えている。なんかここだけ見られたらホントにあたしが絵里を襲ったように見えちゃいそう……。
「でもさぁ、一緒には寝たんでしょ?」
「うん……いろいろ大変だった……」
「そっかぁ」
「絵里も一緒に寝たんでしょ?」
「うん! さゆの寝顔可愛いんだよぉ〜! あっ、違う、さゆは寝顔も可愛いんだよぉ〜!!」
「……あっそ」
呆れてあたしはまたベッドに横たわる。
あたしはなんとか理性を保ってたっていうのに……。
……んっ? なんで絵里はあたしが紺野さんと一緒に寝たのを知っとうと?
「ねぇ、絵里……」
「あっ! そうだ!!」
コイツまた何か裏工作をしたんじゃないかと絵里に問いただそうとしたけど、その前に絵里が急にベッドから立ち上がった。
「れーな、ちょっと待ってて!」
「ちょ、絵里っ!?」
あたしに有無を言わさず、絵里はダダダッと部屋から出て行った。
な、なん? どうしたのいったい……?
わけがわからずそのままボーっとしてると、少しして絵里が、出ていったときの勢いそのままで部屋に戻ってきた。
「ねぇ、絵里……」
話しかけるも絵里は聞く耳持たず、さっき出した私物をバッグに戻している。
そしてすべて詰め終わるとバッグを持ち上げて肩にかけた。
「れーな、頑張って!!」
にこやかな笑顔でそれだけ言うと、絵里はバッグを持ったまままた部屋を出て行く。
はっ? 頑張れってなにを……?
ていうかバッグもってどこ行くと?
あいかわらず状況がつかめないまま絵里が出ていったドアを見ていると、そのドアがキィッと控えめに開いた。
開いたドアから入ってきたのは……
「ぇえっ!? 紺野さんっ!?」
入ってきたのはバッグを手に持った紺野さんだった。
紺野さんはそのままバッグを置いて、さっきまで絵里が使ってたベッドに腰掛ける。
「こ、紺野さん……どうして?」
「んーと……え〜と……」
紺野さんはなぜか顔を赤らめるとモジモジしはじめた。
あれっ? なんで?
「えーとね、亀井ちゃんが……」
「絵里が?」
「『れーなが紺野さんと一緒じゃなきゃヤダーって駄々こねて聞かないから部屋かわってください』ってことでかわってあげたんだけど……」
「……はぁっ!?」
絵〜里〜!!
半分以上はお前がさゆと一緒の部屋になりたいからだろーが!!
「あの……田中ちゃん……」
「あっ、はい?」
「そのぉ……ホントに?」
「はっ?」
「だから……亀井ちゃんが言ってたこと……」
「えっ!?」
絵里が(勝手に)言ってたこと……。
『れーなが紺野さんと一緒じゃなきゃヤダーって駄々こねて聞かないから部屋かわってください』
「えっとぉ……」
「あっ、やっぱり違うよね?」
「いえ……」
これは……もしかしたら大チャンスなのかもしれない。
今なら自分の気持ちをちゃんと伝えられるかも……。
悔しいけど絵里にちょっと感謝かな?
「ほ、本当です!」
「えっ?」
「あっ、いや、駄々こねたってのは嘘ですけど……紺野さんと一緒の部屋になりたかったのは本当です!」
「田中ちゃん?」
自分のベッドから立ち上がり、そして紺野さんのとなりに座る。
あたしのほうを呆然と見ている紺野さんをあたしも見つめる。
言える……今日こそちゃんと言える……。
「紺野さん……」
「は、はいっ?」
「れーなは……紺野さんのことが……」
バタァン!!
「わすれものー!!」
最悪なタイミングで静かな室内に響いた音と奇声に思わずそっちを睨む。
紺野さんも同じように突然の乱入者のほうを見ている。
その絵里はあたしたちが座っているベッドの、布団の中でゴソゴソと探し物をしている。
中から取り出したのは絵里の私物の少女マンガ……。
「じゃあごゆっくり〜!」
ヒラヒラ〜っと手を振ってにこやかに去っていく絵里……。
前 言 撤 回!!!
絵里、明日シメ決定!!
☆
翌日……。
「あ、あの……れーにゃ……」
「なんっ!?」
「ちょっほいはいんらへろ……ほろほろははひへふれはい?(訳:ちょっと痛いんだけど……そろそろ離してくれない?)」
「ダメッ!!」
あたしは気が済むまで絵里のほっぺたを引っぱり続けました。
あとがき
また……れなこんです……。だって書いてて楽しいんだもん!
れなこんの進みそうで進まない恋愛も楽しければ、れなえりのやりとりも毎回書いてて楽しい!
でもホントは冒頭みたいなのを書きたいんだけど(ぇ いつになるやら。
ところでなんか最近の少女マンガってスゴイらしいですね。いや、読んだことはないんだけど。
小学生くらいの時にアニメの「セー○ームーン」とか「ママ○ードボーイ」とかを妹と一緒に見てたきりだなぁ……。