「あと少しだねぇ〜」
「そうだねぇ」
私の家の寝室。
ベッドに並んで座り、ごっちんが私の肩にもたれかかっている。
指を絡ませあい、私たちは時計を見つめる。
長針と短針がほとんど重なっているけど、完全に重なるまではあとちょっと。
「もうちょっとでごとー21才だぁ〜!」
「実感湧かないべさ、ごっちんが21才だなんて」
「むぅ! それならなっちが25才って言う方が信じられない!」
「あっ、言ったな!」
軽く睨むとごっちんはキャッと身を退いた。
でもすぐにまた私の方に頭を乗せる。
まったく、調子いいんだから。
ごっちんの頭を撫でてあげると、ごっちんは気持ちよさそうに笑った。
今年のごっちんの誕生日は珍しくコンサートがなくて、オフで。
だから私も仕事を片づけて、なんとか9月23日をオフにしてもらった。
久しぶりにごっちんと過ごせる、ごっちんの誕生日。
仕事はないから夜更かしもできて、だから私たちは今、ごっちんの誕生日になる時を二人で待っている。
「もうすぐ?」
「うん、あと1分だね」
時計の秒針がカチカチと今日を終わりに導いていく。
そして、ごっちんが生まれた日がやってくる。
肩にもたれていたごっちんは、今や私の腰に手を回していて。
「あと何秒?」
「えーと、20秒」
「カウントダウンして、なっち〜!」
「え〜?」
時計を見ると、あと十秒ちょっと。
ここはごっちんのお願いを聞いてあげようかな?
「10…9…8……」
一秒一秒時を刻んでいく。
もう本当にあと少し。
「5…4…さ……!?」
でもあと3秒になった瞬間、腰に回っていたごっちんの手が私の頬を包んで。
「んっ!?」
そして一瞬で唇が重なった。
私は時計に気を取られていて、まったくこのキスに反応できなくて。
ごっちんの唇が離れたときは、秒針はすでに12を通り越したあとだった。
甘い時間、独り占め
「えへへ〜、誕生日はなっちとキスして迎えちゃった〜!」
「もぅ、ビックリしたべさ」
ごっちんが小悪魔みたいにニヤッと笑う。
さてはこれを狙って私にカウントダウンを要求したな?
「まぁ、いいや。ごっちん、誕生日おめでとう」
「んあっ、ありがとう、なっち!」
ごっちんと向き合うと、ごっちんはちょっと唇を突き出して目を伏せた。
今度はして欲しいみたい。
そっとごっちんの頬に手を添えると、ごっちんもさらに手を重ねてきた。
ごっちんを引き寄せ、今度は私から唇を重ねる。
「ごっちん、好き……」
「んっ、ごとーも、なっちのこと、好き……」
唇を離してからも、私は頬や額にキスを落としていく。
ごっちんはくすぐったそうにしながらも、キスを一つ一つ受け入れてくれて。
もう一度唇を重ねようとしたけど……
♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜
「んあっ?」
ごっちんの携帯の着信音で、私たちは動きを止める。
この時間に来るってことはきっとごっちんの誕生日おめでとうメールだろう。
ごっちんは携帯を掴んだけど、私は反射的にそのごっちんの手を押さえた。
「えっ、なっち?」
「・・・・・・」
ごっちんが不思議そうな顔で私のほうを見ている。
だって……なんか嫌だったんだもん……。
ごっちんの特別な日、私と一緒にいるのに、ごっちんが他の人のことを一瞬でも考えちゃうことが。
「ヤダぁ……メール見ないで……」
「な、なっち?」
「今日は、なっちだけを見てて……?」
ごっちんが目をぱちくりと見開く。
でもゆっくりと笑顔になって。
「わかった。だからそんな悲しそうな顔しないで?」
「あっ……」
悲しそうな顔、してたのかな……?
ごっちんの長い指が私の髪を梳くと、ごっちんの唇が頬に触れた。
ごっちんは携帯を開き、メールを読まずにマナーモードに設定すると、そのまま放り投げた。
そのあとごっちんは私のほうに倒れ込んできて。
「わわっ?」
「んふっ!」
私はベッドの上に押し倒された。
「そのかわり、今日はずっとなっちのこと見てるからね?」
「うん、見てて……」
「一緒にケーキ作ろーね?」
「うん、大きいの作ろう!」
「誕生日プレゼントもちょうだいね?」
「あっ……」
やばっ!
そういえば誕生日プレゼント用意するの忘れてた!
「むぅ! なっち、もしかして忘れてたの〜?」
「ご、ごめん! ちょっとこのごろ仕事が忙しくて!」
ごっちんがジト目で私を見てくる。
え、えーと……
「それじゃあ……なっちをあげる」
「却下! だってなっちはもうごとーのだもん!」
「あっ、そうだね。じゃあ買い物行ったときに好きなもの買ってあげる」
「約束だよ、なっち〜!」
ごっちんが私の上に覆い被さってくる。
身体に感じるごっちんの重みがなんだか心地良い。
ゆっくりとごっちんの背中に腕をまわし、ごっちんを抱きしめる。
「なっちぃ……」
「ん〜、どした?」
ごっちんが耳元で私の名前を呼ぶ。
この「なっちぃ」は甘えたいときの「なっちぃ」だ。
その証拠に、ごっちんの唇がゆっくりと私の耳に近づいてくる。
「なんか、幸せすぎて怖いな……」
「そうかな? なっちは幸せすぎて嬉しいけど」
「むぅ……」
ごっちんの身体をきつく抱きしめ、そのままコロンと身体の上下を入れ替える。
今度はごっちんがベッドの上に仰向けになり、またがった私を見上げている。
ちょっと不安そうな顔。
放り出されたごっちんの手に自分の手を重ねる。絡まる十と十の指。
「大丈夫だよ、ごっちん。なっちはどこにも行かないよ? ずっとごっちんと一緒にいるよ」
「本当?」
「もちろん」
身体を徐々にごっちんの身体に重ねていき、最後に唇が重なった。
ゆっくり深く、ごっちんを味わう。
唇を離すと、ごっちんはもういつものにこやかな笑顔に戻っていた。
「んあ〜、なんか、やっぱりなっちの方がお姉ちゃんだなぁ〜」
「なんだべさ! あたりまえっしょ!」
「え〜? でも普段はちょっと頼りないし〜」
「なんだとー!」
軽く睨みつけると、ごっちんはえへっと笑った。
でもそのあとでちょっと小さくあくびをする。
あっ、イチャイチャしてたらもうけっこう時間が経っちゃってる……。
「ごっちん、眠い? もうそろそろ寝ようか?」
「なっちともうちょっとイチャイチャする〜……」
といっても、ごっちんはかなり眠そうで。
「起きてからもイチャイチャできるっしょ。今日はずっと一緒にいれるんだし」
「む〜……そっか、そうだね」
ごっちんの上からどくと、ごっちんはもぞもぞとベッドの上を移動して、掛け布団の中に潜り込んだ。
私も同じように、ごっちんの隣に潜り込むと、ごっちんはすぐに私にすり寄ってきて。
まったく、21才になっても相変わらず甘えただべさ。
ごっちんの頭を撫でながら、私は寝室の電気を消した。
「なっち〜」
「ん〜?」
「ありがとね」
「えっ、なにが?」
急にお礼を言われて、私は思わずごっちんを見つめた。
「ごとーの誕生日を一緒にすごしてくれること。仕事がんばって、休み取ってくれたんでしょ?」
「そんなこと……。それならなっちの方が『ありがとう』だよ」
「えっ、なんで?」
暗闇の中でもわかる、ごっちんのキョトンとした顔。
楽しくて、ついつい微笑んでしまう。
だってさ、ごっちんの誕生日なのに、私がプレゼントをもらっちゃったから。
あなたの大切な大切な一日の時間を全部。
誰にもほんのちょっとだって渡さない。今日は私があなたを独り占め。
でもそのぶん、誕生日プレゼントはたくさん買ってあげないとね。
ごっちん、誕生日おめでとう!
あとがき
今年のごっちん誕生日小説は何がなんでもなちごまにしてやるという野望があったので、試行錯誤の末、こんな感じになりました。
ラブラブというよりは、甘々といったほうが合ってるような感じを目指しました。
とにかくイチャついているだけです(ぉ
なんというか、なちごまは攻めとか受けとかがなくなってきてるような気がする。すなわち、どっちでも萌えれる!(マテ
というわけで、ごっちん21才おめでとうございます!