「や……ごっちん、もう……無理ぃ……」
「ダ〜メ! も一回!」
「えっ!? ちょ、ちょっと〜!!」
「あはっ! ミキティのカラダって甘くってクセになっちゃう!」
「やっ、んっ、あっ……!」



  Strawberry Jam



 浅い眠りから覚めると、そこはごっちんの腕の中で。
 そういや昨日もごっちんはアタシの家に泊まったんだっけ、と思い出す。
 腰に感じるだるさでさらに実感……。

 時計を見ると目覚ましの鳴る10分前。
 二度寝する時間もないようなので、アタシは目覚ましを止める。

「ごっち〜ん、ほら、起きろ〜!!」
「ん〜……?」

 アタシは隣に眠っている、寝起きの悪い恋人を起こしにかかるけど。
 そのごっちんは唸るだけで全然目を開けてくれない。

「ごっちん! 仕事遅れるよー!!」
「ん〜……」

 やっぱりごっちんは唸るだけ。
 ま、昨日あれだけアタシを弄んだんだし、これで元気いっぱいに起きてこられたら、アタシは自分の身体のほうが心配になるんだけど……。

「遅刻するぞー!!」
「……ミキティ……すき……」
「えっ!?」

 起きたと思ったけど寝言だったみたい。
 思わずドキッとして、言葉が出なくなる。
 可愛くて無防備な寝顔にちょっとたじたじ。
 どんな夢見てるんだろ?

「ニヘヘ、もぅ、ミキティったら……かぁいぃなぁ……」

 ほ、ホントにどんな夢見てるんだろ……?


「やれやれ……」

 とりあえずごっちんは放っておいて、だるさの残る身体を起こす。
 うわぁ、寒ッ……。
 あったかいベッドに戻りたくなるのをなんとか我慢してベッドから這い出て、脱ぎ散らかしてあった(正確には脱ぎ散らかされた)服を着る。

「……お腹減った……」

 んだけど、いつもご飯をつくってくれるごっちんはまだベッドの中。
 しょうがない、久しぶりにアタシが自分で作るか……。
 服の上からエプロンを着て冷蔵庫を開けたけど……。
 げっ、なんもない……。
 最近買い物もまともに行けなかったからなぁ……。
 仕方なく、アタシはトースターに食パンを突っこんだ。


 焼けたトーストをテーブルに並べ、眠気覚ましのコーヒーも置く。
 ま、これで一応朝食の準備は完了。
 あとはまだ眠ってるねぼすけさんを起こすだけ。

「ごっち〜ん! 朝ご飯できたよ〜!!」

 ダイニングから呼びかけても無反応。
 おかしいな、さすがにここまで寝起き悪くはないんだけど……?
 まさかタヌキを決め込んでるんじゃないだろな?
 アタシはこっちに背中を向けて寝ているごっちんへと近づいていく。


「ごっちん……?」

 ごっちんの背中側からそっと顔を覗き込む。
 するとしっかりと閉じられていたごっちんの目がパチッと開いて、ニカッと笑顔になる。

「やっぱり! って、わわっ!?」

 ごっちんの腕がアタシを捕え、一瞬で上下が入れ替わった。
 ベッドに倒され、ごっちんがアタシの上にまたがって押しつけてくる。

「あはっ! おはよう、ミキティ!」
「おは…うむっ!?」

 挨拶を返す前に、その挨拶はごっちんの口の中に呑み込まれていった。
 ごっちんの舌がアタシの口内を暴れ回り、ごっちんの手がアタシの身体を撫で回す。

「ちょ、ごっちん! ストップ!! 昨日あれだけヤってまだ足りないの!?」
「だって〜、エプロン姿のミキティなんて、なぁんか萌えるんだもん!」
「だー、朝っぱらから発情するな、変態真希!!」
「ちょっとだけ! すぐ終わらせるから!」
「ダメー!!」

 首筋を舐めつつ内股を撫でてたごっちんをなんとか引き離す。

「ちぇっ!」
「いや、ちぇじゃないから!」

 アタシは起きあがって、乱れた服を整える。

「さてと、それじゃ改めて、おはようミキティ」
「おはよう、ごっちん……んっ……」

 今度は優しくごっちんの唇が舞い降りる。
 アタシも目を閉じて、ごっちんを受け入れる。

 唇を重ねたまま、ごっちんが身体を抱きしめてくる。
 ごっちんに包みこまれるアタシ。
 そっとごっちんの体重がかかってきて、アタシは唇を重ねたまま、ベッドの上に横たわる。

「……って、ちょっと待てー! これじゃあ結局同じじゃんか!!」
「ちぇーっ! たまにはろまんちっくに迫ってみたのに」
「いや、ちぇーじゃないから!!」

 まったく、油断も隙もありゃしない!
 いまだに迫ってくる性獣を払いのけて、ようやくアタシはベッドから離れる。

「とりあえずなんか服着れ!!」
「……せっかくごとーが裸で迫ってるのに堕ちないなんて……ブツブツ……」
「いや、もう見慣れてるし」

 渋々ごっちんが服を着ている横で、アタシはこれ以上ごっちんが発情しないようにエプロンを外した。

「さて、朝ご飯できてるから」
「朝ご飯よりミキティを食べたいよ〜!」
「あ〜、はいはい!」

 ごっちんの戯言を適当に無視しながらダイニングに戻る。
 襲われてるあいだに冷め切ってなきゃいいけど……。


「え〜? トースト〜!? 手抜きだなぁ、ミキティ!」

 ダイニングに入った瞬間に、盛大に文句をたれるごっちん。
 うるさいな、アタシが料理苦手だってこと知ってるでしょ!?

「……文句あるなら食べるな!」
「えへへ〜、嘘うそ! だってせっかくミキティがつくってくれたんだし!」

 ごっちんはテーブルに着くと、すぐにトーストにかぶりついた。
 アタシもごっちんの向かい側に座って、トーストを一口かじる。

「あっ、ミキティ、ジャムとって」
「んっ」

 テーブルの上に置いてあったイチゴジャムをごっちんに渡す。
 アタシもつけようかな?
 ごっちんがつけ終わったあと、アタシもトーストにイチゴジャムを塗った。


「ふあ〜、お腹いっぱい!」

 結局トースト2枚と、コーヒー1杯で朝食は終了。
 それだけでもけっこうお腹はふくれた。

 仕事に行くにはまだちょっと余裕がある。
 朝食簡単だったからかな?
 ちょっとのんびりしようとリビングに腰を下ろすと、すかさずごっちんがアタシの前に座り込んだ。
 そのままアタシに寄りかかってくる。

「……ミキを座椅子にしないでくれない?」
「いいじゃんたまには。いつもは逆だし」

 えぇ、そうですね。
 いつもはこんな和やかには済みませんけど……。

「イヤ?」

 器用にふり返って、アタシの顔を覗き込んでくるごっちん。
 アタシの答えわかっててやってんでしょ、その小悪魔的な上目遣い……。

「……別に」
「ならいいじゃん!」

 余裕たっぷりのごっちん。
 なんかムカツクから、手を前にまわしてギューッと抱きしめる。

「あはっ、なんかたまにはこうやって抱きしめられるのも悪くないね」
「へへ〜、でもこの状況だとどんなこともしほーだいだねぇ〜」
「別にしてもいいけど、夜どうなっても知らないよ?」
「うっ……まだヤる気?」
「くふふ……」

 ごっちんがすり寄ってくる。
 なんかちょっと甘えたモード?

「なんか幸せだねぇ、ミキティ……」
「えっ、そう……?」
「そうだよ〜!」

 ごっちんの手が伸びてきて、アタシの髪を梳き上げる。

「今年ももう終わりだけど、来年も、そのまた次の年も、ずっとずっと、こうやって一緒にいたいなぁ」
「う…ん……」

 顔がカーッと熱くなる。
 どうしてこうこの人は嬉しいことをサラッと言っちゃうんだろう……?

「照れてるミキティも可愛い」
「うっさい!」
「あはっ!」
「もう! そろそろ支度しないと! ホントに遅刻するよ!」
「もうちょっと」
「だめ!」
「じゃ、あと一回」
「へっ? 一回?」

 グッと顔を引き寄せられる。
 ごっちんの顔が目の前に広がった。

「これからもよろしくね」
「んっ」

 まだ朝なのに、もう今日何回目かのキス。

 微かにイチゴの味がした。






あとがき

はい、やっぱり2004年の締めはごまみきで!!
大塚愛の「Strawberry Jam」がもとです。
あれ聞いたとき一番最初に思い浮かんだのがごまみきでした。
だってなちごまだと、なっちはちゃんとした朝食作りそうじゃん?(笑
しかし当初の予定だとここまでごっちんがエロくならなかったんだけどなぁ?
ま、ごまみきらしくていいか(マテ

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