いじわる家庭教師
「……できました、後藤さん!」
「んあっ、早いねぇ〜」
紺野の方を向くと、紺野は満面の笑顔で答案用紙をあたしに差し出している。
眼鏡をかけ直し、答案用紙を受け取ると赤ペンを出して採点し始める。
サラサラっと採点していくけど、やっぱり丸ばっかり。
「すごいね、紺野。また全問正解だよ」
「ハイッ! 完璧です!」
ニコニコ笑っている紺野。
改めて答案用紙を見返してみるけど、紺野本人が言うように『完璧』で。
「でもさぁ、紺野……こんなに勉強できるんならごとーなんか必要ないんじゃない?」
「えっ?」
家庭教師をはじめた頃からすでに紺野は頭がよかった。
あたしが教えることもどんどん吸収していき、テストでもいつも素晴らしい成績をとった。
学年でトップをとってきたこともある。
でもそれは嬉しい反面、あたしは本当に必要なのかと考えさせられる。
「そんなことないです。後藤さんが教えてくれるから私は頑張れるんです」
「紺野……」
顔を赤らめて、それでも一言一言しっかりと言ってくれる紺野。
それはあたしの悩みを少しだけ取り除いてくれた。
でも……それと同時にどっかのストッパーもとれちゃったみたいで……
「じゃあ次は紺野が苦手な勉強教えてあげるよ」
「えっ? 次は英語ですか?」
「もっといいことだよ」
そのまま紺野に近づいていく。
紺野に触れられるまで近づくと、紺野の肩に手を置いて微笑みかける。
紺野はまだわかってないらしく、笑顔であたしの微笑みに答えてくれたけど、その顔を見た瞬間、あたしは力をかけて紺野をその場に押し倒した。
「えっ!? 後藤さんっ!?」
紺野は一瞬で真っ赤になった。そんな紺野にあたしは覆い被さる。
邪魔な眼鏡を外してテーブルの上に置いた。
「ご、後藤さんっ!?」
「紺野、そんな可愛い顔してると襲われちゃうよ?」
「お、襲われちゃうって後藤さんが襲ってるんじゃないですかぁ!」
「そ。だからごとーに襲われちゃうよ?」
そのまま顔を近づけていって頬に唇を落とす。
そしてさらに赤くなった頬を両手で包み込んだ。
「ぁ、あの、後藤さん!」
「ホラ、目閉じてよ、紺野」
「で、でも……」
「目開けたまましたいの?」
紺野は少しのあいだうろたえていたけど、やがてギュッと目を閉じた。
それを見届けると、あたしは軽く笑みをこぼし、紺野に顔を近づけていく。
……と、同時に片手だけ紺野の頬からはなし、テーブルの上に伸ばした。
☆
「あ……あの……後藤さん……」
「ん〜?」
「その……まだですか?」
「何が?」
「えっ!? 『何が』って……」
パチッと目を開いた紺野の眼前に、あたしはテーブルの上からとったプリントを突き付ける。
「な、なんですか? これ……」
「いいから、ハイッ!」
プリントを覗き込んだ紺野の顔が、赤から一瞬で青くなった。
紺野の目には今、たくさんのアルファベットが映ってるに違いない。
「なにって次のテスト。紺野が苦手な勉強するって言ったでしょ?」
「あっ……」
「あっれー、紺野。もしかして期待しちゃった?」
いじわるっぽく言ってみたら、紺野の顔はまた赤に逆戻り。
「ち、違います!」
ガバッと起きあがるとすぐテーブルに向かって問題に取り組みはじめた紺野。
あたしもまた眼鏡をかけて、紺野の向かい側に戻った。
でも紺野、今のも一種の『べんきょお』だよ?
紺野は英語よりも苦手だろうけどね。
「満点とったらさ、続きしてあげてもいいよ♪」
「え、遠慮します!!」
口ではそう言ってるけど、なんかいつもより気合いが入ってるように見えるのはあたしの気のせいかな?
大丈夫だよ。英語が終わったら次は紺野が得意な社会にしてあげるから。
あとがき
短編でアンリアルは初ですね。しかも家庭教師もの。
家庭教師付いたことも付かれたこともないのでどうなんだか……?
ていうかごっちんは紺野に教えられるくらい頭が(強制終了
決して眼鏡ごま書きたかっただけではありません。えぇ決して!