「後藤さぁ〜ん……」
「だ〜め!」

 ベッドのなか、甘えるような声ですり寄ってくるれいなに背中を向ける。

「なんでですかぁ? れいなはもう覚悟はできてます!」
「だ、ダメったらダメなの。まだ早い!」

 それでも負けじと背中にすり寄ってくるれいな。
 お、落ち着け、あたし!

「も、もしかしてれいなのカラダに魅力がなかとですか!? そりゃれいなは藤本さんに負けず劣らず小さいですけど……でも成長期過ぎ去った藤本さんと違ってれいなはまだ望みあります! これからすぐに大きくなります!!」
「いや、そうじゃなくて……」

 つーかサラッとすごいことを……。
 ミキティに聞かれたら殺されるよ?

「ねぇ、後藤さぁ〜ん!」
「ダ〜メ!! ほら、明日も早いんでしょ? さっさと寝ないと遅刻するよ?」
「うぅ……」

 身体の向きをかえ、そっとれいなを包んであげると、すぐにれいなの目はとろんとなってくる。
 キュッとあたしのパジャマを力なく掴むけど、どうやらそれが限界だったようで。

「うぅ……後藤さん、ズルイですぅ……」
「おやすみ、れいな」

 そっとおでこにキスしてやると、れいなはあたしより一足も二足も早く、夢の世界へ旅立っていった。



  my kitty girl



「はぁ……」

 腕の中ですやすやと眠っている少女を見て、あたしは溜め息を一つこぼす。
 なんとか今日も……第一次試練はクリアー……。


 最近れいなはやたらと迫って、いや、誘ってくるようになった。
 なんとか今のところは受け流してるんだけど、最近あたしもちょっと押され気味。

 いやいや、ホントに魅力がなかったらいいんだけど……むしろありすぎて困るっていうか……。
 あんな蠱惑的なアプローチされたんじゃあ、気を抜いたらすぐに食いついちゃいそう……。

 でも、あたしは決めたんだ! せめてれいなが中学卒業するまでは手は出さないって!
 ていうか中学生に手を出しちゃったら犯罪だし……。

「でも……」

 あたしの胸の中ですやすやと眠っているれいなをもう一度見つめる。
 丸くなって可愛らしい寝息をたてているれいなは、まるで子猫みたいに可愛くて……。

「あぁあ……やっぱりこれって据え膳だよ〜!」

 パジャマの裾に伸びそうになってる手を必死に押さえ込む。
 ダメダメダメー! 心に決めただろ、あたし〜!!

 こうしてあたしにとっての二次試練が、今夜も始まった。

「んあ〜、れいなのバカー!」


 まぁ、なんとか昨日も耐えきったんだけど、今日はあたしも早くからお仕事で。ていうか同じ仕事なんだけど。
 おかげで今超眠い……。

「ふぁ〜あ……」
「ごっちん、眠そうだねぇ」

 あたしのとなりから話しかけてきたのはなっち。
 今日はハロモニの収録で、なっちとは同じ楽屋なわけです。

「んあ〜、ちょっとね……れいなが……」
「あ〜、付き合い始めたんだってね、おめでとう!……んっ? てことはまさかごっちん!」

 「このっこのっ!」なんて言って肘で突っついてくるなっち。
 や、違うから、なっちが思ってるようなことはしてないから。ちゃんと我慢したから。


「なんか前の撮影押してるみたいでまだちょっと時間あるから少し眠れば?」
「んあ〜、そうだね……」

 そういやさっきスタッフさんが来てそんなこと言ってたような……。
 それじゃあ、ちょっとお言葉に甘えて……。

「膝かして、なっち……」
「ん、いいよ」

 ぽふっとなっちの膝の上に倒れ込む。
 あ〜、なんか気持ちのいい膝……。

「おやすみ。でも収録中は寝ないでね?」
「んあ〜……」

 睡眠不足のせいもあって、あたしはすぐに眠ってしまった。


「……んっ……」

 特になにかのきっかけがあったわけじゃないけど、なんとなく目を覚ました。
 なっちに起こされなかったってことはまだ撮影押してるのかな? それともそんなに眠ってなかったのか?
 時計を見ようとして、ちょっとした違和感に気づく。

「……あれ? なっちふともも痩せたんじゃない?」

 眠る前はもうちょっと肉付きがよくて柔らかいふとももだったような。
 ちょっと上を向いてみると……

「すいませんねぇ、肉付き悪くて」
「!? れいな!?」

 いつの間にかなっちはれいなに変わっていた。
 あたしは慌てて飛び起きる。

「な、なんでれいながここに!? なっちは!?」
「後藤さんに会いに来たら安倍さんに押しつけられました。安倍さんはどっかに遊びに行きました」

 なっち〜……、あたしを見捨てないでよ〜!


「気持ちよさそうに寝てましたねぇ〜、後藤さんっ!」

 うぅ、怒ってるみたい。言葉に鋭い棘がある……。

「ご、ゴメンね、ちょっと、ものすごく眠たくて……」
「膝枕してほしいんだったらまず自分の彼女に言ってください! れいなだって膝枕くらいしてあげます! そりゃ、安倍さんのほうが気持ちいいかもしれませんけど……」

 ちょっと目線を反らして頬を染めてるれいなを見ると、怒られてる最中だってのについつい頬が緩んでしまう。
 ヤキモチ妬いてるところも可愛いなぁ〜!

「ゴメンゴメン、次かられいなに言うから」
「あはっ! じゃあお詫びってことで……えいっ!」
「んあっ?」

 笑顔に戻ったれいながぽてっとあたしのふとももに倒れ込んでくる。
 さっきと逆にあたしが膝枕をする側に。

「わ〜、なんか気持ちいいですぅ〜」

 あたしの膝の上でころころと転がっているれいなを見ると、なんか本当に猫みたいに見えてくる。
 気まぐれだったり、プライドが高かったり、そんなところも似てるよね。
 思わず喉をくすぐると、れいなは身を丸めて悶えた。

「や〜ん!」
「れいなって猫に似てるよねぇ〜」
「みんなから言われるんですけど……そんなに似てます?」
「似てるよ。れいなはごとーの子猫ちゃんだね!」
「なんですか、それ〜?」
「あはっ、なんだろ?」

 そのままじゃれ合ってるとなっちが戻ってきた。
 どうやら収録が始まるかられいなを呼びに来たらしい。
 れいなは「じゃあ、またあとで〜!」と手を振って、なっちといっしょにスタジオに向かった。
 さてと、じゃああたしももうちょっとしたら「笑わん姫。」のドレスに着替えるか。


 今日も仕事が終わったられいなをウチに呼んだ。
 あたしの手作りのご飯を食べて、テレビ見て、遊んで、お風呂に入って(別々にね!)、また寝る時間になったんだけど……。
 あたしにとっては試練の始まりなわけで……。

「ん〜、後藤さぁ〜ん……」
「だ、ダメだって!」

 ベッドに腰掛けると、すぐにれいながすり寄ってくる。
 あぁあ、お風呂上がりのパジャマ姿もまた可愛いなぁ! ってそんな場合じゃなくて……。

「れいな明日は午後からなんで遅くなっても大丈夫ですよ〜!」
「そ、そういう問題じゃないんだって!!」

 落ち着け、欲望に負けるな、あたし!
 背中に抱きついてくるれいなを無視していると、れいなはやっと離れてくれた。
 諦めてくれたかな? なんとか今日も耐えきった……。
 でも、れいなはあたしの前に来てニコッと笑うと……


「いいですよ〜! 後藤さんがしてくれないんなら、れいなが後藤さんを襲っちゃいますから!」
「え゛っ?……って、うわっ!?」

 グッと力がかかり、身体が傾く。
 いきなりだったからまったく抵抗できずにベッドに倒されると、すぐにれいなの身体が覆い被さってきた。

「ちょ、れ、れいな! んっ……!」

 れいなは上になったままあたしの顔や首筋にキスの雨を降らせる。
 くすぐったいっていうか、こそばゆいっていうか……でも、け、けっこう上手いかも……?

「ウフフ、後藤さん……」

 顔を上げたれいなは逆光でよく見えなくて。
 でも、まだ幼い顔立ちのなかに、妖しい魅力が隠れている。

「子猫はね、成長すればメス猫になるんですよ、後藤さん?」


 ……はぁ。
 心の中で大きく溜め息をつく。
 ちょっと……もう……無理。

「れいな……」

 手を伸ばし、れいなの頬を包みこむ。
 そして一気に顔を引き寄せて、唇を奪った。

「んっ! ごと……んむっ!」

 れいなの身体から力が抜けてくる。こういうキスは初めてだもんね?
 十分にれいなの唇と口内を味わったあとで唇を離すと、れいなはあたしの上に力なく崩れ落ちた。
 ギュッと胸に抱き寄せながら、れいなの身体を裏返し、上下を入れ替える。

「あっ……ハァ……後藤さん……」
「大丈夫、ちゃんと優しくするから」

 ベッドの上に横たわったれいなは真っ赤な顔をしてたけど、もう止められないよ?

 れいなから誘ってきたんだから、覚悟してね、あたしの可愛い子猫ちゃん!






あとがき

お久しぶりな猫ネタです。
なんか今回はごっちん受けっぽい感じでしたが、そこは片霧カイトが書く小説!
しっかり最後はリバースさ!(マテ
でも結果としては後藤さん一本負け(笑
書いてる途中で何回か裏に行きかけましたが、なんとか呼び戻しました。
つってもけっこうこれでもギリギリ?

( ´ Д `)<戻るよ!