「ただいま〜!」

 扉を開けて中に入る。
 といっても今日帰ってきたのは自分の家じゃなくて。
 昨日ミキティからメールが来たので、あたしはミキティの家にやってきた。
 最近はコンサートとかで忙しくてあまり会うヒマがなかったからけっこう久しぶり。
 くふふ、ミキティ、今夜は寝かせないからね?

「あっ、ごっちん、遅かったね?」
「んあっ、ミキティ〜!!」

 玄関で靴を脱いでいると、ミキティが奥の部屋から顔を出した。
 あたしは靴を放り出して、ミキティに飛びつく。

「あはっ! ミキティ、久しぶり〜! 会えないあいだ寂しかったでしょ? ミキティからお誘いしてくれるなんて嬉しいなぁ〜! 今日はごとーがたっぷり可愛がってあげるからね?」
「ちょ、ちょっと! いきなりどこ触ってんの!!」

 久しぶりのミキティを味見してるとグイッと身体を離された。
 む〜、なんだよ、せっかくの愛情表現を!



  紅の味



「でもさぁ……」
「んっ、なに、ごっちん?」

 そのあといろいろあって、結局リビングに落ち着いた。
 というか落ち着いてしまった……。
 あたし的には一刻も早くミキティを食べちゃいたかったんだけど……。
 まぁ、いいか。夜はまだまだ長いしねぇ〜!

「ミキティからのお誘いなんて、けっこう珍しいね?」
「ん〜、そうかもね?」

 まぁ、お誘いがなかったとしてもあたしからミキティの家に来てたと思うけどね。
 最近なかなか会えなかったから。
 そろそろミキティを補給しとかないと。

「で、今日はどうしたの?」
「えっ、わからないの?」
「んあっ?」

 質問に質問で返されて、あたしはちょっと考え込む。
 なんかあったっけ……?
 ミキティはそんなあたしを見て溜め息をこぼしながら、いったん席を立った。

「ほら、これ」
「あっ!」

 戻ってきたミキティの手に乗っていたのは、蝋燭の並んだバースディケーキ。
 あっ、そうか……

「まだ2人でちゃんとお祝いしてなかったじゃん」
「あ〜、そうだったねぇ」

 誕生日当日はコンサート中だったから、スタッフさんたちや家族からはお祝いしてもらったけど、ミキティからはまだだった。

「ハタチおめでとう、ごっちん」
「ありがとう、ミキティ! じゃあさっそくいただきま〜す!」
「って、いただくのはケーキだから!!」

 ミキティに飛びかかろうとしたら、寸前で静止させられた。
 え〜? ミキティ自身がプレゼントじゃないの〜?
 そろそろお預けされるのも辛いんだけど……。


「あっ、それとさぁ……」
「んあっ?」

 2人で並んでケーキを食べていると、またミキティが立ち上がってどこかへ行った。
 そして帰ってきたときには手に瓶のボトルを抱えていて。

「はい、これプレゼント」
「あっ、それって……ワイン?」
「そ。せっかくハタチになったんだし」
「そうだねぇ、これからは堂々と合法的に飲めるね!」
「……まぁ、いいけど……」

 ミキティはワイングラスを2つ並べると、コルクを抜いてワインを注いだ。
 紅い液体が滑り落ちていくと同時に、いい香りが部屋に溢れる。
 ボトルのラベルを見てみると「CHATEAU PALMER」と書いてあった。

「もしかしてそれってさぁ、ごとーが生まれた年の?」
「ていうかミキも同い年生まれなんだけどね」
「ふ〜ん、なんかロマンチックだねぇ」

 ワインが半分ほど注がれたグラスを持ち上げる。
 ミキティも同じようにグラスを持ち上げた。

「それじゃあごっちんのハタチを祝って、乾杯!」
「かんぱ〜い!」

 カチンと軽くグラスを合わせる。
 そして一緒にグラスを口に運ぶ。
 甘くてちょっと渋い味が口の中に広がった。

「おいし……」
「本当だねぇ」
「んふっ、ありがとね、ミキティ」

 残ってたワインも一気に流し込む。
 グラスがまた無色透明に戻った。

「もう一杯飲む?」
「ん、いただこうかな?」
「じゃあミキが注いであげる」

 ミキティがワインの瓶を持ち上げ、空いたあたしのグラスにワインを注いでいく。
 なんか嬉しいなぁ、こういうの。
 また満たされたワインを少し飲む。

「ミキティももっと飲もうよ?」
「あっ、うん」

 少しだけ残ってたワインを飲み干し、ミキティがグラスを置いた。
 そのままミキティの手がビンに伸びたので、あたしはその前にビンを取った。

「あっ、注いでくれるの?」

 ミキティはあたしを見てそんなことを言ってきたけど……

「ううん、飲ましてあげる!」
「え゛っ……?」

 一瞬後ずさったミキティの身体を捕まえる。
 まったく、しばらく会わないうちに妙に勘が鋭くなっちゃってぇ!
 少しくらい鈍感な方が可愛いゾ!

「ちょ、ちょっと待ってぇ!!」
「待たな〜い!」
「ご、ごっちん! もう酔ってるの!?」
「まっさか〜! このくらい余裕だよ!」

 まだちょっと気分が良くなってるくらいだから!
 もがくミキティを取り押さえながら、あたしはワインを口に含む。
 ソファの上に膝立ちになり、ミキティの顔を両手で包んで上を向かせれば準備オッケー!

「んふっ!」

 少しずつ顔を近づけていくと、寸前でミキティはギュッと目を瞑った。
 なんだ、けっこう期待してるんじゃん!

「んっ……」

 優しく唇を合わせて……
 ミキティの中に少しずつワインを流し込む。
 ミキティの喉がコクンと鳴った。

「はぁ……」

 ワインがなくなったので口を離す。
 ミキティはトロンとした目をしていて。
 顔が赤いのはアルコールのせいか、それとも……。

「普通に飲むより美味しかったでしょ?」
「バカぁ……ちょっと零れちゃったじゃん……」
「んあっ、ホントだ」

 言われてみると、ミキティの口の端から零れたワインが筋を作っていた。
 ミキティがティッシュを取ろうとしたけど、あたしはまたそれを遮って。

「ちょっと、ごっちん?」
「ごとーが拭ってあげる!」
「えぇ!? いいって……んっ!」

 ミキティの首筋に吸い付く。
 そのまま筋を逆に辿って、唇の端まで舐めあげた。

「あんっ……ごっちん……」

 あ〜……。
 やばいんだって……。
 そんな色っぽい声とか出されたらさぁ……。


「ミキティ……」
「んっ?」

 ミキティを抱きしめ、耳元に唇を寄せる。

「ちょっと……ガマンの限界かも……」
「はぁっ!?」

 ミキティはしばらくそのまま動かなかったけど、やがてあたしの背中に腕をまわし、そのまま後ろに倒れた。
 てことは必然的に、あたしはミキティに覆い被さるような形になっちゃったわけで。

「あれ? いつもはもっと抵抗するのに、どしたの、今日は?」
「今日は特別だからさ……」
「……あはっ!」

 また一段と紅くなったミキティの顔を優しく包み、もう一度口付けを交わす。
 やっぱり本当のバースディプレゼントはミキティ自身だったみたい。

「食べちゃうよ、ミキティ〜?」
「あっ……」

 包みを開くと、ワインで味付けされたメインディッシュが露わになった。
 でもまだちょっと味付けが薄いかなぁ?

「ミキティ、おかわり飲むでしょ?」
「うん……」

 またワインを口に含み、ミキティに口付ける。
 今度は少しワインを残した状態で唇を離し、残ったワインはミキティの体に落としていく。

「やっ、ちょっと、シミになっちゃう!」
「じゃあシミになる前に下着もとっちゃお!」

 肌に滴るワインをなめてちょっと味見。
 同じワインのはずなのに、ちょっぴり甘味が増した気がする。

 食前酒は飲んだし。
 あっ、ちょっと先にデザート食べちゃったけど。

「それじゃ、いただきま〜す!」
「うん、召し上がれ……」


 ケーキよりも、ワインよりも
 やっぱりミキティが一番美味しい……。






あとがき

ごっちん誕生日記念小説です。
ハタチ=酒という単純思考回路(笑
もうとにかくいろいろヤッちゃいました。
表に置くにはかなりギリギリですねぇ。
ごまみきじゃなかったらアウトだったでしょうけど(爆

川;VvV从<マテ

というわけで、誕生日おめでとうございます!

( ´ Д `)<戻るよ〜!