「おはようございま〜す!」
通りすぎる人に挨拶をしてスタジオに入る。
今日は今度のコンサートの曲と今回の新曲のダンスレッスンだ。
いつものジャージを着たアタシはスタジオの扉を開ける。
「おはようございま〜……」
「おはよう、ミキティ!」
「・・・・・・」
中に入ったとたん、よっちゃんが背景にキラキラを背負って挨拶してきて、アタシとしたことがひとっつもツッコめなかった。
それだけじゃなく、よっちゃんはなぜか宝塚の男役だか、どっかのホストだかわからないような衣装を着ている。つまり『ミスムン』の衣装だ。今日ダンスレッスンだよね?
「よっちゃん……どうしたの?」
「いや〜、ちょっと気合い入れてみたの!」
「てゆーか『ミスムン』の衣装だよね?」
「そう! 今度のコンサートで久々に歌うんだってさ〜!!」
「えっ? マジで!?」
てことは今日はそのダンスレッスンなのか。
んっ? でも『ミスムン』って……
「でもさぁ、ごっちんも安倍さんもいないのに大丈夫なの?」
「そこはちゃんと変えるんだってさ!」
「へぇ〜、誰がやるの?」
そう言うとよっちゃんは急にガシッとアタシの肩を掴んできた。
な、なに? ダメだよ、アタシにはごっちんという心に決めた人が……。
「そんなのミキティに決まってんじゃん! あと安倍さんのパートは高橋だって。よろしくね!!」
「……はっ!?」
プライベート・レッスン
「……つーわけでさぁ」
「ふ〜ん、ごとーのパートミキティがやるんだぁ〜!」
今日のダンスレッスンは結局新曲と、『ミスムン』だけだった。
アタシは今回の新曲でセンターを任されちゃったんで、そっちを重点的に。
なので『ミスムン』は完璧にはできなくて、結局『宿題』にされてしまった……。
ダンスレッスンから帰ってくると、アタシの家にごっちんが来ていて。
ごっちんに夕食を作ってもらい、それを食べてアタシはようやく一息ついた。
今はソファの上で、ごっちんとまったり中。
「でもさぁ、『ミスムン』って難しいでしょ?」
「うん……ミキは新曲もセンターだからそっちも覚えなくちゃいけなくってさ……。あ〜、疲れた……」
「お疲れ様、ミキティ。あっ、そうだ!」
ごっちんの顔がニパッと輝くと、アタシはいきなり座ってたソファの上に倒された。
ぇえっ!? ちょっと待って! そんなイキナリ……
「ちょ、ちょっと待って、ごっちん! ミキまだシャワー浴びてないし、今日ホントに疲れたし……」
「んあっ? あはは、違うってば、ミキティ! お疲れみたいだからさぁ、マッサージしてあげるよ!」
「マッサージ?」
「あっ、変なマッサージじゃないかんね? それはあ・と・で!」
「え゛っ!? あとでって?」
「あはは、まぁいいからいいから、うつぶせになって〜!!」
なんかスゴイ重要なところをはぐらかされた気がするんだけど……。
とりあえず極力気にせずに、アタシは言われたとおりうつぶせになる。
するとアタシの上にごっちんがまたがってくる。
「よっと、この辺かな?」
「あっ、その辺……気持ちいぃ……」
「けっこうこってるね、ミキティ」
そのままごっちんはアタシの肩や背中を的確に刺激してくる。
なかなかうまくて気持ちいい。疲れた体が癒されていく。
ごっちんのマッサージで、アタシは早くも夢心地……。
「あっ、ミキティ、足ツボマッサージもしてあげよっか?」
「ヤダ! 足ツボキライ!! 痛いもん!」
「カオリみたくせくすぃ〜に痛がってよ!」
「いや、無理だから」
そんなふうにやりとりをしているあいだにも、ごっちんはマッサージを続けてくれて。
とっても気持ちよく、元々の疲れも重なって、いつの間にかアタシはそのまま眠ってしまっていた。
☆
「……んっ?」
いつ閉じたのかわからないまぶたを開ける。
すると視界にごっちんの笑顔が広がる。
「あっ、ごめん、寝ちゃった?」
「んふふ、いいよ、30分くらいだし。それにしてもごとーのテクもなかなかだねぇ〜!」
サラッと髪を梳き上げられて、それでようやくひざまくらをされていると気づく。
ごっちんはなおも髪をいじりながら、優しい笑顔でアタシを包む。
「ミキティ、ホントに疲れてるみたいだね。もう寝る?」
「う〜ん、そうしたいんだけど、まだダメだ、宿題やらなきゃ。まだ『ミスムン』完璧じゃないから」
気持ちよかったごっちんのひざまくらから頭を起こす。
そしてう〜ん、と体を伸ばす。
「だからミキは宿題終わってから寝るよ」
「そっか。がんばりやさんだねぇ、ミキティは。そんなところも好きだよ」
急にごっちんの顔が近づいてきたので、慌てて目を閉じる。
ごっちんの唇が一瞬触れて、すぐに離れた。
そのあとごっちんは「よっと!」なんていってソファから立ち上がる。
ごっちんの手がアタシの手を掴み、引っぱられてアタシもソファから立ち上がる。
「手伝ってあげる。ていうか教えてあげるよ、『ミスムン』のごとーパート!」
「えっ!? でもごっちんも疲れてるんじゃ……」
「だいじょーぶ! ちゃんと手取り足取り腰取り教えてあげるからさ〜! くふふ……!」
「それじゃ練習にならないって……」
☆
あんなこと言ってたけどごっちんは丁寧に教えてくれて。
深夜までかかったけど、アタシは『ミスムン』のごっちんパートを完璧に覚えきることができた。
たぶん自分一人でやってたらもっと時間かかったと思う。
「あ〜疲れた〜!」
「ごめんね、ごっちん」
「んも〜! そういうのはいいっこなし! こういうときは『ありがとう』でしょ?」
「……そっか、ありがとう、ごっちん!」
「どういたしまして!」
ごっちんはふんわり笑う。つられてアタシも笑顔になる。
でも……疲れた。ついでに体があっちぃ……。
今日汗かきっぱなし。シャワー浴びたい。
パジャマとタオルを取り出してバスルームへと向かう。
でも途中で立ち止まる。
せっかくだから、今日くらいは……
「……ねぇ、ごっちん」
「んあっ?」
「お風呂……一緒に入る?」
「……うんっ!」
あとがき
書いてみちゃった1! プライベートレッスン・ごまみきヴァージョン!
書いてる途中裏に逝きかけたんですけど、ここはちょっとあえてほのぼのとした感じに。
ごまみきには珍しくエロ少なめです(笑