「はぁ〜、今日も疲れた……」

 今日は「笑っていいとも!」への出演のあと、他にもちょっと仕事があって。
 結局帰ってきたのは夜になってしまった。

「ただいま〜」
「んあっ、おかえり〜!」

 家に帰って扉を開けると、そこから私を紹介してくれた愛しい声がした。
 外国に仕事で行っていたから、会うのは久しぶりで。
 仕事で疲れたにもかかわらず、私はついつい笑顔になってしまう。



  コイビト



「ただいま! ごっちん、来てたんだ!」
「おかえり〜! なっち、会いたかった〜!!」
「なっちも会いたかったよ〜!!」

 リビングに入ると、暖まった空気とともに、ごっちんが笑顔で出迎えてくれた。
 私は上着を脱いでハンガーに掛ける。

「はぁ〜、あったかい〜」
「外寒かったでしょう〜!」

 ごっちんはソファから立ち上がると、そっと私の身体を包みこんだ。
 外の空気で冷えた身体がじんわりと熱を取り戻していく。
 私もごっちんの背中にそっと手を回す。

「なっち、あったかい?」
「うん、とっても」
「好き?」
「大好き」

 ニコッと笑ったごっちんの目がゆっくりと細められていく。
 私も同じように目を細めながら、ちょっとだけ背伸びをして、ごっちんの顔に近づいていく。
 最後の距離をつめたのはどっちだろうか。
 瞳が完全に閉じた瞬間、私たちの唇が重なった。

「あはっ、なんか久しぶり」
「本当だねぇ」
「会えないあいだ寂しかったよ、なっちぃ」
「なっちも。ずっとごっちんのこと考えてた」
「もっかいしてい〜い?」
「んっ、い〜よ」

 今度は確実にごっちんから。
 私の唇にそっとごっちんの唇が重ねられた。


「なっち、お茶入れてくるね!」
「あっ、ありがと」

 ようやく身体を離すと、ごっちんはさっさとリビングから出て行って。
 私はソファにポスッと腰を下ろす。
 しばらくするとごっちんが紅茶の入ったカップを二つトレーに乗せて戻ってきた。

「はい、なっちの」
「ありがと、ごっちん」

 ごっちんからカップを受け取って、一口飲む。
 しっとりとした、私好みの味。この味を出せるのは私以外だとたぶんごっちんだけだろう。
 お互いの好みなんてもう知り尽くしてしまった。
 ごっちんも私の隣に腰掛け、自分用の紅茶を飲む。

「いいとも見たよ、なっち〜!」
「あ〜、ストラップもらえなかったよ〜。ごっちんとお揃いにしたかったのに」
「あはは〜! いいねぇ、それ! お揃いのタモリさんストラップ〜!!」
「あっ、それよりもごっちん! またなっちの寝相のことばらしてーっ!」
「え〜、いいじゃ〜ん! もうみんな知ってるって〜!」

 ごっちんはまた紅茶を一口飲んだ。
 でも口からカップを話すと、そのままテーブルの上に置いてしまって。
 ごっちんは私の腕を掴み、私にもたれかかってきた。
 海外に行ってて連絡すら取れなかったからか、今日のごっちんはちょっぴり甘えたモードみたい。

「電話でも話したかったなぁ〜、あの時は一刻も早くなっちの声聞きたかったのに……」
「ごめんね。さすがに飛行機の中じゃ電話できないし。それにごっちん電話でなに言うかちょっと不安だし……」
「むぅ、ちゃんとわかってるよ〜!」
「はいはい、ごめんね」

 ちょっと膨らんだ頬も頭を撫でてあげるとすぐ元通り。
 とろけるような笑顔で私にじゃれついてくる。

「でもごっちんが紹介してくれて嬉しかったよ。前に出た時は紹介してくれなかったべさ」
「いや〜、さすがにあの時はあれ以上ハローで続けるのもねぇ……」

 「あっ、でも」とごっちんは私にじゃれつきながら呟いた。

「最初はねぇ、なっちを紹介しようかどうか迷ったんだよねぇ」
「えっ……?」

 その言葉に私はカップを落としそうになるほど動揺した。
 カップはなんとかテーブルに置いたけど、それ以上は理性が追いつかなくて。
 私はごっちんを離し、思わず詰め寄った。

「なんで!? なっちのこと紹介するの嫌だったの!? もしかしてカオリのほうがよかった!?」
「へっ……な、なっち……?」
「それともガキさんや小春ちゃんのほうが!? ごっちん、まさかロリコンだったんだべか!?」
「ちょ、なっち、落ち着いて……!」
「そりゃなっちは童顔童顔言われるけど、これでも25才だべさ! ごっちんより年う……んっ!?」

 それ以上は言葉が続かなかった。
 だってごっちんに口を塞がれてしまったから。
 残りの言葉を全部吸い取るような激しいキスに、私は頭ボーっとしていた。
 身体の力がだんだん抜けていき、ごっちんに身体を預ける。
 すると、そっとごっちんの唇が離れ、私はそのままごっちんに抱きすくめられた。

「なっち、落ち着いた?」
「うん……」
「そっか、よかった」

 さっき私がしたみたいに、今度はごっちんが私の頭を撫でる。
 優しく、優しく。それがとっても気持ちいい。

「あんね、なっちが嫌とか言う訳じゃなくてさ、ほら、あのコーナーって『お友達紹介』なわけじゃん?」
「うん」
「なっちはごとーの『友達』じゃなくて、『恋人』じゃん? だからちょっと迷ったんだよねぇ」

 サラッと言ってしまうごっちんに、私は思わず顔が熱くなった。
 そんなことを知ってか知らずか、ごっちんは私をギュッと抱きしめ、続ける。

「でもやっぱりなっちはごとーの大切な人だからさ。紹介するならやっぱりなっちがいいなぁって。だから恋人だけどなっちにしちゃった」
「……ごっちんのばかぁ……」
「あはっ!」

 ごっちんにギュッとしがみつく。
 ごっちんはそんな私を優しく包みこむ。
 なんかいつもと立場が逆だけど、こんなのも悪くないなぁ……。

「もう……変な汗かいたべさ」
「あっ、それじゃお風呂入ろっか?」
「ん、そうだね」

 私はようやくごっちんから離れ、立ち上がる。
 ごっちんも立ち上がり、二人でいっしょにお風呂場へと向かった。

 友達には見せられない私を見せることができる。
 友達とは過ごせない時間を過ごすことができる。
 その相手はただ一人、私の恋人であるごっちんだけ……。






あとがき

せっかくネタが満載だったので、思わず書いちゃいました、いいともなちごま小説!
最近SSもサボり気味だったので、リハビリも兼ねて、ここはやっぱり一推しのなちごまで。
いつもみたいなイチャコラなちごま(笑)というよりは、もうちょっと落ち着いた感じの、しっとりとした甘々を目指したんですが、どうでしょう……?

(●´ー`)<戻るべさ!