「ミキティ〜!!」
「へっ? うわっ!?」

 久々にごっちんと重なったテレビ収録の日。
 収録が終わったら、すぐさまごっちんがアタシに飛びついてきた。
 背中に感じるごっちんのぬくもり。
 嬉しいんだけど、ここじゃちょっとヤバイ……。みんな見てるし……。
 なんとかごっちんを引き離し、ごっちんと向き合う。

「で、なに、ごっちん?」
「ミキティ明日休みだよねぇ?」
「うん。ごっちんは仕事だっけ?」
「でもそんなに遅くまではかからないんだよね。仕事終わったらミキティんチ行っていい?」
「うん、いいよ!」
「あはっ、やった!」

 ごっちんがニコッと笑った。
 でもだんだんとその笑顔が「ニコッと」から「ニヤッと」に変わっていく。

「じゃあ"アレ"で出迎えてね、ミキティ! そろそろ見てみたからさ!!」
「え゛っ!? "アレ"……!?」


 そして翌日。
 夕方にごっちんから「仕事終わったから今から行く〜!」とのメールが入った。
 重い腰を上げて、"アレ"を手に取る。
 どうしても踏ん切りがつかないけど、でも約束しちゃったしなぁ……。

 仕方ないか……。
 観念して部屋着を脱ぎ始める。
 しかしこれって……どうやって付けるの?
 つーかやけに露出が高いような……。
 えーと、これでいいのかな……?

 苦労して着るとちょうどその時家のチャイムが鳴った。
 なんか急に緊張してくる。
 玄関まで出て鍵を開けると、そこからごっちんが飛び込んできた。

「ただいま、ミキティ!」
「・・・・・・」

 ごっちんはそのままアタシの言葉を待っている。
 言わなきゃダメなんだよね……。

 この前の誕生日にごっちんがプレゼントしてくれた服。
 着ると言っちゃった手前、着るしかなくて……。

 ごっちんがプレゼントしてくれた服は……

「お、おかえりなさいませ、ご主人様……」

 メイド服……。



  My Master



 時は少しさかのぼって2月26日。
 つまりアタシの誕生日。
 アタシはごっちんが作ってくれたケーキに立っているろうそくを吹き消した。

「誕生日おめでとう、ミキティ〜!!」
「ありがと、ごっちん!」

 ごっちんが「パンッ!!」とクラッカーを鳴らす。
 そして部屋の電気を付けた。

「ケーキ食べよ!」
「あっ、うん!」

 器用にケーキを切り分けるごっちん。
 そしてその一つをお皿に取ったんだけど……

「はい、ミキティ、あ〜ん!」
「えっ、いいよ!」

 ごっちんはさらにケーキをフォークで切って、アタシの口許に差し出す。
 さすがにちょっと恥ずかしいんだけど、ごっちんは退いてくれなくて。

「あ〜ん!」
「あ、あ〜ん……」
「んふっ、素直でよろしい!」

 ごっちんが笑顔になる。
 そして口の中に甘いクリームの味が広がった。

「ハイ、じゃあもう一切れ。あ〜ん!」
「あ、あ〜ん……」

 またごっちんに食べさせてもらうけど……

「あっ、ごめん、生クリームついちゃった」
「えっ、どこ?」

 口のまわりを拭おうとしたけど、それはごっちんによって止められた。

「ごとーがとったげる!」
「あっ、ちょっと!」

 ふわっとごっちんの唇が口許に舞い降りる。
 そのままついばむように何回も何回もキスが交わる。
 その間にだんだんとごっちんの体重がかけられてきて、アタシは床に押し倒されてしまった。
 ごっちんがアタシの上に覆い被さってくる。

「ご、ごっちん……」
「あはっ、やっぱり組み敷いてるミキティは最高に可愛い!」
「すっごく複雑……」

 しばらくそのままでイチャイチャしてたけど、急にごっちんが何かを思い立ったように体を起こした。

「あれ、どうしたの?」
「忘れてた! 誕生日プレゼントもあったんだ!!」
「えっ、プレゼント?」

 ごっちんは持ってきた荷物の中から、綺麗にラッピングされた包みを取りだした。

「えーとね、一応服なんだけど、着てくれるかな……?」
「わぁ、ありがとう! 絶対着るよ!」
「本当?」
「本当!」

 なぜか念を押すごっちん。
 これが梨華ちゃんだったら返事に迷うところだけど、ごっちんはけっこうセンスいいしね。
 どんなの選んでくれたんだろう?

「じゃあ約束だよ! 絶対着てね!」
「うん!」
「誕生日おめでとう、ミキティ!」
「ありがとう! 開けてもいい?」
「あはっ、もちろん!」

 ワクワクしながら包みを開けて……アタシは固まった。
 黒いスカートに白いエプロン。ヘッドドレスにガーターベルトなどなど。
 これって……

「あの……ごっちん……」
「んあっ?」
「何、これ?」
「メイド服! いや〜、村っちと一緒に買い物行ったら見つけてさぁ〜!! 着てくれるんだよね、ミキティ?」


「あはっ、やっぱり似合ってるぅ!!」
「わぁ!? ちょっと!!」

 ごっちんがそのまま飛びついてきた。
 アタシはなんとかごっちんを抱きとめる。

「いや〜、見つけてくれた村っちに感謝だね!」
「ご、ごっちん、見たんだからもういいでしょ! 着替えさせてよ!」
「あはっ、ダメ! 今日はそのままメイドでいてね! あっ、それと『ごっちん』じゃなくて『ご主人様』でしょ?」
「ぇえっ!?」

 ずっとこの格好なの!? 恨むよ、村田さん……。

「ちゃんと働いてくれたらごほうびあげるからさ! でもいいつけを守れなかったらオシオキね!」
「お、オシオキって……?」
「んふっ!」

 ごっちんの唇がそっとアタシの耳元による。
 そして甘い吐息とともに囁きが耳に吸い込まれていった。
 その囁きによってアタシの顔は一瞬赤くなったあと、信号みたく一気に青ざめた。

「わかったかな、ミキティ?」
「わ、わかりました、ご主人様……」
「あはっ、いいコいいコ!」

 ごっちんの手がアタシの頭を撫でる。
 あんなことされるくらいなら、少しのあいだ従順にしてたほうがマシだ……。


「じゃあまずはメイドらしくお茶でも入れてもらおうかなぁ〜?」
「はい……ご、ご主人様……」

 とはいえ、やっぱり『ご主人様』と呼ぶのはかなり恥ずかしい……。
 でも、オシオキよりは……。
 心の中で葛藤しながら、アタシは紅茶を入れ、ごっちんの待つリビングまで持っていった。

「お、おまたせしました……」
「ありがと〜!」

 ごっちんはそのままカップを受け取ったけど、何を思ったのか途中で手が止まった。
 そしてニヤッと笑って、カップを元に戻す。
 あっ、あれはなんかよからぬことを思いついた笑顔だ……。
 ごっちんはその笑顔のままアタシの方を向いて……

「ミキティ、飲ませて!」
「えっ、飲ませて、って……?」

 ごっちんは人差し指で自分の唇をちょんちょんっと触る。
 それでアタシは理解した。
 口移しで、って事に……。

「わ、わかりました……」

 カップを持ち上げて、そこで顔がかなり熱くなっていることに気付く。
 意を決して紅茶をあおり、立ち上がる。
 ごっちんの頬を優しく包むと、ごっちんはゆっくりと目を閉じて、唇を突き出した。
 唇を重ね合わせ、紅茶をゆっくりごっちんの口内に流し込んでいく。
 そして口の中が空になると、そっと唇を離した。

「あ〜、ちょっと零れちゃった……」

 見るとごっちんの口の端から紅茶の筋ができていた。
 言われる前にアタシは跪き、紅茶の筋を舐め取る。

「いいコだねぇ、ミキティは」

 ごっちんはそんなアタシの頭を優しく撫でてくれて。
 あっ、ヤバイ……なんか、変な気分……。
 ごっちんが喜んでくれることがすっごく嬉しい……。
 服装って気持ちにも影響を与えるのかな……?

「んあ〜、従順なミキティ可愛いッ!!」
「うわっ!?」

 でもアタシのそんな態度がごっちんの琴線を刺激してしまったらしい。
 アタシを抱きしめてきて、キスの雨が降る。

「じゃあ今度は夕飯作ってもらおうかな?」
「ええっ!? ミキ料理できないよ!」
「ケガしたら消毒したげるから!」
「そ、それが狙い……?」


 結局夕飯はごっちんが作ってくれたけど、そのあともアタシはごっちんの命令によってマッサージしたり、ひざまくらで耳掃除したり、お風呂のお世話をしたり。
 そして最後は……夜伽……。
 メイド服のままで、ごっちんにたくさん可愛がられました……。

 でも最初はとにかく抵抗があったけど、やってみたら思ってたよりも嫌じゃないって言うか、悪くないって言うか……。
 それはやっぱりご主人様がごっちんだったからだろうけど。

 ぇえっ!? いや、無理だから、明日もとか絶対ムリだから!
 ちょ、ちょっと、そんな本気で残念そうな顔しないでよ!


 うん……だから、また今度、ね……?






あとがき

今回のごまみきはコスプレです!!(マテ
村田さんがマサオにメイド服を送ったという情報を得まして、それを元に書いてみました。
しかししかし、書いてみると、メイドって何するの?(ぇ
雇ったことなんて当然ないし、話題のカフェにだって行ったことないし、某メイドマンガは服以外参考にならないし。
あっ、ごっちんが贈ったメイド服はまさしく某メイドマンガのメイド服みたいな感じです(笑

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