ミルキー キッス
「んっ……んんっ? 冷た……」
顔に水がかかる感覚で目が覚めた。
一瞬、「雨でも降ってんのか?」と場違いなことを考えてしまう。
そりゃそうだ。だってここは思いっきり屋内。
確か昨日はごっつぁんチに泊まりに来たんだっけ……。
目をうっすらと開けてみる。
すると視界にごっつぁんの顔がいっぱいに広がる。
ついでに手に握られている霧吹きも……。
「……ごっつぁん……」
「おはよー! やぐっつぁん!!」
「その手に持っている霧吹きはなに?」
「ウチのお母さん愛用の目覚ましウェポン!」
「・・・・・・」
そのままもぞもぞと布団の中に潜ろうとすると、ごっつぁんが「んあー!」なんて叫んでオイラの上に飛び乗ってきた。
「ぐえっ!」
思わず潰されたカエルみたいな呻き声を上げてしまう。
「やぐっつぁん! 朝だよー!!」
「せっかくオフなんだからもうちょっと寝かせてくれ〜!」
「なに言ってんの! ごとーだってせっかくオフなんだから! イチャつくに決まってんでしょ〜!!」
「昨日の夜散々イチャついたじゃん! ごっつぁん激しすぎるんだよー!!」
おかげでまだ体がだるいし、腰が痛い……。
オイラがこんな惨状だってのに、なんでごっつぁんはこんなに元気なんだ!?
「だってやぐっつぁんが求めてくるんだも〜ん!!」
「なっ!? ごっつぁんが寝かせてくれなかったんだろ!?」
「あはっ! やぐっつぁんのムネおっきくしてあげようと思って〜!」
「うっさい!!」
「いいからさっさと起きろ〜!!」
バサッと掛け布団を剥ぎ取られる。
いくら春になって暖かくなってきたからって、さすがに裸では肌寒い。
「うあっ! 寒っ!!」
「ハイ、着替え!」
「くぅ〜……」
仕方ない、起きますか……。
ベッドの上に体を起こし、ごっつぁんが放り投げてくれた服に着替え始める。
ごっつぁんはそんなオイラの様子をおとなしく見てたけど……
「あっ、そうだ! やぐっつぁん、おはようのちゅ〜!」
「うわっ!? ちょっと、オイラまだ着替えちゅう……」
「ん〜、なんだ、やぐっつぁんもして欲しいんじゃ〜ん!」
「ち、違う!……んっ!!」
「ちゅう」だけに反応したごっつぁんが迫ってきて、オイラは下着姿のまま、またベッドに逆戻り。
しばらく唇がくっついたり離れたりをくり返し、そしてようやく離れた。
オイラの上に覆い被さって、オイラの顔を覗き込んでいる。
「かぁわいい〜! またしたくなっちゃう!!」
「ちょ、もうマジ無理!」
「あはっ! わかってるよ〜、また今夜ね!」
「明日は仕事なんだけど……」
ごっつぁんがオイラの上からどいてくれたので、オイラは服を着て、顔を洗うため洗面所に向かう。
うぅ、腰痛ぇ〜……10代の体力についていけない……。
オイラも年かなぁ、なんて……
こんなこと言ったら裕子に殺される……。
顔を洗って部屋に戻ると、ごっつぁんがテーブルいっぱいにいろいろなおかずを広げていた。
「朝ご飯?」
「うんっ! 下で家族と一緒に食べるといろいろうるさいから持ってきた! 食べよ〜!」
ごっつぁんと向かい合うように座る。
「「いただきま〜す!」」
合掌して一礼し、今日のメニューを見渡すと……
うっ……!?
オイラの天敵発見!
「あ、あの……ごっつぁん……」
「んっ?」
ごっつぁんはオイラの天敵である牛乳を一口飲みながらこたえてくれたけど、オイラは硬直。
「あの……これ……」
「あっ、やぐっつぁん、牛乳ダメだったっけ。ごとーんチじゃ朝いっつも牛乳だからなぁ」
「う、うん……」
「んも〜、そんなんじゃ身長おっきくならないぞ!」
「いいよ、もう諦めたから」
「ムネもおっきくならないぞ!」
「関係ねぇだろ!!」
ごっつぁんは自分のカップにつがれた牛乳を一気に飲み干すと、オイラのカップを手に取った。
「しょうがないなぁ、じゃあごとーが……」
「うん、いいよ、オイラのぶんも飲んで」
「ううん。ごとーが飲ませてあげる!」
「え゛っ!?」
ごっつぁんは牛乳を一気にあおると、そのまま笑顔でアタシに迫ってくる。
思わず後ずさるけど、後ろにはベッドがあって逃げ場がなくなる。
「ちょ、ごっつぁん!? オイラ牛乳はマジダメなんだって!!」
「んふふ〜!」
ごっちんの手が伸びてきてほっぺを包み、ちょっと上向きに顔を固定される。
や、やっぱり口移しで飲ませる気!?
ジタバタ暴れるけど、ごっつぁんとオイラじゃ力が全然違うので、簡単に押さえつけられてしまう。
「ご、ごっつぁん〜!!」
「んふっ!」
ごっつぁんの笑顔が近づいてきて……
唇がピッタリと重なる。
牛乳が口内に侵入してくると思ったんだけど……
「……んっ?……んんっ!」
入ってきたのはごっつぁんの舌で、そのまま口の中で暴れ回る。
思わず身体がビクッと反応してしまう。
完全なディープ・キス……。
「ぷはっ!」
「あはは〜、やぐっつぁん可愛い〜!! 『んんっ!』だって〜!!」
「ぇえっ!? 牛乳は?」
「んなもんとっくに飲んだよ」
ようやく唇を離してくれたごっつぁんは満足そうに微笑んで。
真っ赤になってるオイラの顔を覗き込むと、おもむろに立ち上がった。
「じゃ、代わりにお茶でも入れてくるよ。待っててね〜!」
ヒラヒラ〜っと手を振って、ごっつぁんは部屋を出て行った。
あ、遊ばれた……。
オイラはまだ胸がドキドキして動けない。
唇にはほんのりとミルクの味が残っていて。
でもなぜだか嫌な感じはしない。
もしかしてホントにごっつぁんが飲ませてくれたら、牛乳でも飲めたかもしれない、なんて……。
あぁ! でも悔しいから……
戻ってくる前にごっつぁんのおかず全部食べてやるっ!!
あとがき
やぐごまです。ハロモニの飛鳥鍋を嫌がる矢口を見て思いついたネタ。
しかし書いてるあいだになんかだんだんとエロくなりまして(マテ
最終的にはこんなんになりました。
やっぱり朝は牛乳だよね〜!