「ごっちん、ごっちん!」
「……んん〜?」

 あたしの名前を呼ぶ声でパチッと目を開けると、そこにはミキティの顔。
 ミキティの目がじーっとあたしの目を覗き込んで……
「おはよう、ごっちん!」
「・・・・・・」
 まだ完全に覚醒しきってないあたしと対照的にミキティはずいぶん前に起きていたようで。
 そっと腕が首に巻き付いてくると、そのまま引き寄せられて唇が重なった。
 あたしもされるがまま、目を閉じてミキティの唇を味わう……。



  White Morning



「……ZZzz。。..」
「って、また寝ないでよぉっ!!」
 ブンブンとミキティに揺すられて逝きかけた意識を現実に戻す。
「ぉぁょぅ、ミキティ……」
「はいはい、おはよう。そんでもってメリークリスマス!」
「えっ?……(間)……あぁ、そういや今日って24日か……」
 まだ寝ぼけているあたしはミキティの発現をちゃんと理解するのに30秒ほど要した。
 眠い目をこすってると、急にミキティにその手をとられて引っ張り起こされた。

「な、なになに!? いったいどうしたの、ミキティ?」
「いいからいいから! ちょっと見てよ!」
「ん〜?」

 起き上がると強引に体の向きを変えられて、ベッドの横にあるカーテンのかかった出窓のほうに向けられる。
 何なの、いったい? まさか「実はまだ真夜中でした〜☆」とか言うつもり?
 そんなオチだったらミキティはったおすよ? ついでにそのまま食べちゃうよ?
 ミキティはおもむろにカーテンに手をかけて、そのまま一気に開いた。

「ほらっ!」
「……うわ〜……」

 そこにあるのはいつも見慣れた景色のはずなのに……
 今日はまるで違う世界に迷い込んでしまったように、まったく見慣れない景色が広がっていた。

「夜に雪降ったんだぁ〜……」
「そう! ミキもびっくりしちゃった! ごっちんに早く見せたくてさぁ!」

 純白の雪化粧を纏った町。
 その雪が朝日を反射して、一面光に満ち溢れている。

「北海道はいつもこんな感じ?」
「ん〜、もっと積もるかな」

 あたしたちはしばらくその景色に見入っていた。
 まるで夢の世界のようだけど、隣にいるミキティの体温で現実を実感する。
 ……んっ? 体温……?
 ……っていうか……

 ……寒っ!

 そういやあたしもミキティもなんも着てないし……。
 しかも今は真冬。12月の下旬。
 寒いわけだ……。

 そんなわけなんで毛布を一枚布団の下から引っ張り出して、あたしとミキティの体を包み込む。
 ピタッとミキティの背中にくっつくけど……
「んあっ! 冷たっ!!」
「えっ!? あっ、ミキ冷え性だから……」
 そういうレベルの問題かな? なんか異様に冷たい気がするんだけど……。
 そのままミキティをギューッと抱きしめる。

「しょうがないなぁ、それじゃごとーが暖めてあげるよ」
「ぇえっ!? こんな朝っぱらからっ!?」
「バカっ! なに想像してんの!」

 ミキティと向かい合い、もう一度きつく抱きしめる。
 そして冷えた体にそっと唇を落としていく。だんだんと熱を取り戻していくミキティの体。

 そのまままたベッドに倒れ込んだ。
 まぁ、続きをしちゃってもよかったんだけど……
 なんとなくこの雰囲気を壊したくもない。
 だからずっとミキティと抱きあって、お互いの体温を感じていた。
 それだけでも十分満たされた。


「……ごっちん、そろそろ行動しないと間に合わないよ?」
「そうだね」

 服を着て、おそろいのペンダントをつけ、あとは髪をとかしたりメイクをしたりと仕事に行く用意を調え、朝食を食べると一緒に外に出る。
 目の前に広がるホワイトガーデン。
 そっと一歩を踏み出すと「シャリッ」という音とともに足跡が刻まれる。

「誰もいないねぇ。こんなに雪が積もってるのに」
「そうだね、まだ早いからかなぁ?」

 とってもとっても静かな朝。雪がそんな感じをいっそう強くする。
 まるであたしたちのためだけに造られた世界って感じ。
 せっかくだからミキティを抱き寄せて、一回だけキスしてすぐに離す。
 雪の中でしたキスはちょっと冷たかったけど甘かった。


「ごっちん、そろそろ行かないと。遅刻しちゃうよ?」
「そうだね、行こう!」

 腕を組んで白い道を歩き出す。
 あたり一面白の世界は果てしなく続いていて。
 でもそれでもどこまでも行けるような気がした。


 隣にミキティがいてくれれば。





「でも寒いね〜」
「ホントに……」
「夜はもっと冷えるんだろうなぁ」
「そうだよねぇ。ヤダなぁ、冷え性なのに……」
「じゃあ帰ってきたらごとーが暖めてあげる♪」
「……それって……」
「さっきミキティが勘違いしてたやつ!」
「やっぱり……。でもせっかくの『聖夜』なんだからもうちょっとロマンティックにさぁ……」
「えっ? 『性夜』でしょ? 『性夜』!」
「字が違うっ!」






あとがき

クリスマスごまみき編!
これだけ朝なのはご愛敬。決してネタがなかったからではないよ?
「Silver Cross」のあとという設定でもいいです。そういうつもりで書いたわけではないけど。
そういや雪降ったみたいですねぇ。
……見てませんが(死

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