「ごっちん、ごっちん」
「……んぁ……?」
なっちの声で朦朧とした意識の中から戻ってくる。
目を開けると目の前にはなっちの顔。
「ごっちん、これ、もう一回……」
「……ん」
力なく頷くと同時になっちの手があたしのパジャマに伸びてくる。
プチッ、プチッとボタンが外されて……
なっちの手がそっと服の中に入ってきた……。
お薬
ピピピピピ……
電子音が鳴ったと同時になっちはまた手をあたしの服の中に入れてきて、脇にはさんでた体温計を取り出す。
「……38度。さっきより上がってるね……」
「……んぁ……」
久しぶりに重なったオフ。
前日まではなっちと一緒に遊びに行こうとウキウキ気分。
そのままなっちのウチにお泊まりしたんだけど、今日の朝目が覚めたら、なんだか体がだるくて頭が痛い……。
フラフラと立ち上がったけど、そのままなっちに倒れかかっちゃって、すぐにまたベッドに逆戻り。
べいべ〜、風邪にノックアウトです……うぅ……。
「ごっちん、おかゆ作ったよ」
「うん……ありがと、なっち……」
起きあがろうとしたけど、なんだか体がうまく動かない。
頭がボーっとして……神経にうまく命令を送ってくれない。
そのまま起きれないでいると、なっちが優しく抱き起こしてくれた。
なっちはそっとあたしの後ろに回り込んであたしを支えてくれる。
悪いと思いつつもなっちに体重をあずけた。
「はい、あ〜ん」
「あ〜ん……」
あたしの前にまわした手でおかゆをよそってくれるなっち。
口元に寄せられたれんげを少し口に含んだけど……
「んあっ! あちっ!!」
「えっ、うそっ!?」
思った以上の熱さに思わず口を離してしまった。
なっちは驚いて自分も少し食べると、同じように「あつっ!」っと言って口を離した。
「ゴメンね、ごっちん。なんかまだ熱かったみたいで。今冷ましてあげるから」
そういってれんげを持ち上げると、「ふーふー」っと息を吹きかけて冷ましているなっち。
うわっ……なんか至近距離でそんなことされると……よけいに熱が上がっちゃうよ……。
いつもだったらこんな状況、そっこー押し倒してるところなんだけど……
さすがに今は……気持ちは十分元気みたいだけど体が全然元気じゃない……。
おとなしくなっちが冷ましてくれたおかゆを口に入れる。今度は丁度いい温度。
けっこうおなかが減ってたようで、なっちの作ってくれたおかゆはすぐに食べ終わってしまった。
「じゃあごっちん、もう一回寝ようか」
「うん……」
「あっ、でもその前に」
「えっ……?」
なっちはパタパタと寝室を出て行き、しばらくしてタオルを一枚持って戻ってきた。
「寝汗、拭いとこうか。もっと具合悪くなっちゃうべさ」
「あ〜……」
全然気づかなかったけど……そういえばけっこう寝汗かいてるなぁ……。
プチッ、プチッと残りのボタンが外されていくのをボーっと待っていたけど……
パジャマのボタンが全部はずれるとなっちの手が止まった。
「んっ……なっち……?」
「ご、ごめん、ごっちん。あとは自分でやって……」
急になっちは後ろを向いて、手だけでタオルを差し出してる。
あれっ……? もしかしてなっち照れちゃってる? もうそんな間柄でもないでしょうに。
ていうか、状況的に照れるのはあたしの方だと思うんだけども……。
「ゴメン、なっち……ごとーちょっと体動かないから……なっち拭いて……」
「えぇっ!?……う、うん……わかった……」
あたしと同じくらい顔を真っ赤にしたなっちがあたしのパジャマをそっと脱がす。
うわ……いつもみたいに悪戯心でからかってみたけど……や、やっぱりちょっと恥ずかしい……。
「なっち……ごとーが思うように動けないからってえっちなことしないでよ……?」
「し、しないべさ!!」
なっちは顔を赤らめながらもあたしの体を丁寧に拭いてくれて……
一部分だけはサッと拭いて……
また丁寧にパジャマを着せてくれた。
「じゃあもう寝よう。早くよくなってね」
そっとベッドの上に寝かされ、布団を掛けられる。
そのあとでおでこの上に濡れたタオルが置かれた。
「……なっち……」
「んっ?」
「ゴメンね……せっかくのオフなのに……」
「もう! ごっちんはそんなこと気にしないで、風邪を治すことだけ考えなさい! ごっちんが苦しんでるのになっち1人だけお休みを楽しんでられないべさ! それに……ごっちんがいないとちっとも楽しくないし……」
「なっち……」
「だから早くよくなってね」
なっちの顔がだんだんと近づいてきて……
「ちゅっ!」っと一回だけキス。
「な、なっち! 風邪伝染っちゃうよ!」
「ん〜、そしたら今度はなっちがごっちんに看病してもらうべさ!」
慌てたあたしと違ってなっちは余裕たっぷりの笑顔。
「もう寝るべさ」なんて囁かれて頭を撫でられると、今まで寝てたのにまた急に眠くなってくる。
おやすみ、なっち……次に起きたときは元気に回復してる気がするよ。
少し元気が湧いてきた気がする体を横たえて、またあたしは夢の中へと戻っていった。
なっちはあたしのお薬。
疲れてたって、凹んでたって、今みたいに病気のときだって、
いつも優しく元気を分けてくれる。
あたしだけの、特別なお薬。
あとがき
ちょっと考えてみたら一応一推しはなちごまにもかかわらず全然なちごま増えてないじゃん!
と、いうことでやっと書きました、なちごまです。
なにげにちょっと裏風味? いーの、いーの、気にしない(マテ
とりあえず風邪には気をつけてほしいです。今年は喉に来るらしいので。