One Day
<後藤真希>
徐々に大きくなる街のざわめきと、部屋に差し込む太陽の光があたしに朝の訪れを告げる。
といってもあたしの寝起きは最悪だから、もしかしたらもう昼かもしれない。
とにかくあたしはパチッと目を開けた。
今日は久しぶりに娘。とあたしのオフが重なって。
てことは当然、昨日はミキティの家にお泊まりで。
う〜ん、てことはやっぱりもう昼近くだな。なんたって寝たの遅かったし。
で、そのミキティはといえば、同じベッドの中でいまだに爆睡中。
あたしの方に背中を向けて、夢の中を冒険中。
激しくしすぎちゃったかな、とちょっと反省。
ちょっとね。うん、ほんのちょこっと。
しかし、あれですね。
ぺらっと、あたしたちを覆っている掛け布団をめくってみる。
あたしに背中を向けて寝てるのはちょっと心外だけど、綺麗なうなじと背中ってのもけっこうそそるってもんで……。
こんな無防備な姿を露わにするなんて、もうあたしを全権委任大使に任命したようなもんで……。
まだ起きないミキティに、あたしはこそっとイタズラ開始。
「みきてぃ〜……」
起こさないように囁きながら、そっと背中に指を這わせる。
ミキティのからだがピクッと動いたけど、それ以上の反応は示さなかった。
「ミキティ〜」
今度は布団の中をもぞもぞと泳いで、ミキティのうなじや背中に口付ける。
一ヶ所だけ強く吸って、絶対ばれないところに跡を残した。
「んっ……」
今度は声が漏れたけど、それでもまだ起きない。
う〜む、そ〜と〜疲れたと見える。
でもまぁ、そろそろ起こしますか。
「ミキティ!!」
「ひゃあっ!?」
腕をそっと前にまわしてガシッと胸を掴むと、さすがにミキティも飛び起きた。
「あはっ! おはよう、ミキティ!!」
そのまま胸をいじりながら、まずは朝の挨拶。
「あんっ、やっ、ちょ、どこ触ってんのよ、ごっちん!!」
「ん〜と、お腹あたりかなぁ?」
「……殴るよ、本気で」
それは嫌なのでぱっと胸から手を離す。
でもそのかわりにミキティをあたしの方に向かせる。
「んじゃあらためて、おはよう、ミキティ」
チュッと軽くおはようのキス。
そのあとミキティを抱き寄せる。
「……頼むから普通に起こしてくんない?」
「ごとー的にはあれがふつーなんだけど?」
「いや、朝っぱらからセクハラとかありえないから」
減らない口は、もう一回塞いで黙らせちゃう。
唇を離すと、ミキティは照れたように笑った。
なんだかんだ言って喜んでるじゃ〜ん!
あたしもつられて笑顔になる。
「そういえば今日は田中と紺ちゃんがごっちんに料理習いに来るんだったよね?」
「んあ、そうだった。れいなが料理教えて欲しいって言ってたから、じゃあミキティんチ来てって言っといたんだった」
「完っ全にミキんチ泊まるの前提だよね……。まぁ、いいけど、もう昼だからそろそろ来るんじゃない?」
「そうだねぇ、用意しないと。さすがに素っ裸で出迎えるわけにもいかないし」
最後にもう一回だけキスをして。
あたしたちはベッドから這い出た。
◇ ◇ ◇
<田中れいな>
久々にもらった日曜日のオフの日。
だからあたしは久しぶりにポンちゃんチにお泊まりで。
で、まぁ翌日は後藤さんに料理を教えてもらう約束があったので、オフでも早く起きなきゃいけなかったんやけど……。
う〜、その〜……欲望には勝てんかったわけで……。
幸いポンちゃんもOKしてくれて。
ま、それでやっぱりちょっとだけ朝寝坊。
パチッと目を開けると、目の前にはポンちゃんの顔があって。
まじまじとポンちゃんの顔を見る間もなく、ポンちゃんの目もパチッと開いた。
「「あっ」」
声が出たのも同時。顔が一瞬で赤くなったのも同時。
ついでに10pくらい布団に潜り込むタイミングも同時で。
「あっ、その、おはよう、れいな……」
「お、おはようございます、ポンちゃん……」
もうけっこう(といってもまだ…回……)一緒に朝を迎えているけど、どうしても慣れない。
なんかちょっとまだやっぱり恥ずかしい……。
ま、あたしはこれでも少しずつ免疫ついてきてはいるんだけど、ポンちゃんは慣れろって事が無理っぽいな……。
いや、可愛らしくていいと思いますけどね〜!
「あれっ? れいな……今日ってたしか藤本さんチに行く日だよね?」
「はい、そうですけど……」
「じゃあ早く支度しないと! 寝坊しちゃった!」
すばやくポンちゃんが布団から頭を出す。
どうやら今まで完全に忘れてたらしい。
一応時計を見てみると……ゲッ! ヤバイ、ギリギリかも……。
ポンちゃんはベッドから降りようとしたけど、急にその動きが止まった。
「? ポンちゃん?」
「……れいな、向こう向いてて……」
「えっ?……あっ、ハイッ!!」
慌ててポンちゃんと反対に向き直る。
いや、昨日の夜に十分見たし、ついでに堪能もしたんだから、意味ないっちゃないんだけど……。
余計なことを思い出して高ぶった心を静める努力をしながら、あたしも服を着ていく。
「さてと、準備できた、れいな?」
「ハイッ!」
髪をとかして、メイクをして、荷物をまとめて。
ようやくそのころにはあたしもすっかりと落ち着いていた。
「じゃあ、行こう。忘れ物ないよね?」
「忘れ物……。あっ、一つありました!」
「えっ、なにっ!?」
振り向いたポンちゃんにトトトッと駆けよって。
顔をしっかりと固定し、一回だけ唇を重ねる。
「おはようのキスがまだでした」
「……もう……」
これだけでもポンちゃんは真っ赤。あたしも脈が速くなる。
それでもポンちゃんは平静を装って、くるっと前に向き直る。
「それじゃ、もうホントに忘れ物ないよね? 行くよ」
「は〜い!」
ポンちゃんが玄関のドアを開けて外へ歩き出す。
あたしもポンちゃんのあとに続いた。
◇ ◇ ◇
<藤本美貴>
キッチンから包丁の軽快なリズムやお湯が沸騰する音が聞こえてくる。
おそろいのエプロンをつけたごっちんと田中が並んで料理をしている。
「あっ、れいな、指気をつけてね?」
「は、はいっ!」
ごっちんの方が背が高くて、ふたり並んでる様子はまるで本当の姉妹みたいで。
アタシと紺ちゃんはダイニングでお茶を飲みつつ二人を観察中。
「なんかホントの姉妹みたいだねぇ」
「……あっ、はい、そうですねぇ」
紺ちゃんに話しかけるも、紺ちゃんはちらちらとキッチンの方を気にしていて。
ホントに好きなんだなぁ。
ていうかなんか初々しくて可愛らしい。
アタシたちはなんつーか……こういうの飛び越しちゃったし……。
そういや付き合い始めたっていう報告は聞いたけど、そのあとはどうなったのか聞いたことないなぁ。
なんかごっちんは田中から個人的に相談受けてるみたいだけど。
変なこと教えてなきゃいいけど……。いや、変なことしてなきゃいいけど……。
やっぱりちょっと気になって……
ついでにちょっと悪戯心も湧いてきて……
「ねぇ、紺ちゃん」
「はい?」
「田中とはもう寝た?」
「!! んぐっ、ゲホ、ゲホッ!!」
思いっきり咽せる紺ちゃん。
「あ〜、もう、大丈夫?」
咳き込む紺ちゃんの背中をさすってやる。
「い、いきなりなんてこと訊くんですか!?」
「いや〜、ちょっと気になってさぁ。で、どうなの? もうしたの? それともまだしてないの?」
「う…えっと……それは……」
余すところなく真っ赤にして、おろおろと狼狽える紺ちゃん。
なるほど、けっこう順調に進んでるのね。でも、わかりやすいなぁ。
まだ狼狽えてる紺ちゃんを見ると、ついついもっとからかいたくなってきて……。
「まぁ、でも訊くまでもないか? だって紺ちゃん自分で言ってるものねぇ」
「えっ? えっ!?」
アタシはわざとらしく、自分の首筋を指さす。
「キスマーク、ついてるよん!」
「えっ、うそっ!?」
慌てて首筋を触ったり、首をまわして見ようとする紺ちゃん。
アタシは笑うのをこらえるのがやっとで。
「れいな、見えるところにはつけないって言ってたのに……」
そこまで口走って、紺ちゃんはピタッと固まった。
ようやく自分が何をしでかしたのか気付いたみたいで。
アタシは思いっきり吹き出した。
「あはははっ!! 紺ちゃんサイコー!!」
「う〜……ヒドイですぅ……」
「なかなか順調に進んでるみたいじゃん?」
「うっ……そ、そういう藤本さんはどうなんですか!?」
「え〜、ミキは〜……わっ!!」
負けずに反撃してくる紺ちゃんを今度はどうからおうかと考えていたけど、その時背中に何かが抱きついてきた。
そういえばいつの間にかキッチンからは何も聞こえなくなっていて。
「あはっ! なに、紺野知りたいの? ごとーとミキティが毎晩どんなことしてるか?」
「やっ! ちょっと、手入れてくんな!!」
服の中に侵入してこようとする色魔の手をなんとか妨害する。
紺ちゃんはごっちんと一緒にダイニングに入ってきた田中が守るように抱きしめていて。
「藤本さん! ポンちゃんをいじめないでください!!」
「ゴメンねぇ、れいな。ミキティには今夜ごとーがきつくオシオキしとくから!」
「ぇえっ! マジでっ!?」
アタシは今日も眠れなそうです……。
◇ ◇ ◇
<紺野あさ美>
「ごちそうさまでした〜!!」
れいなと後藤さんが作ってくれたお昼ご飯を、私はキレイに平らげた。
「ポンちゃん、美味しかった?」
「美味しかったよ〜! また作ってよ、れいな!」
「ホントですか!? やった〜!!」
「あはっ、よかったねぇ、れいな」
テーブルを挟んだ私の前で無邪気に喜ぶれいな。
そんなれいなの隣で後藤さんが微笑む。
「あっ、そうだ! デザートもあるんだ!」
「えっ、デザート!?」
「ポンちゃんもきっと喜びますよ!」
後藤さんが席を立って、冷蔵庫の方に歩いていく。
れいなも後藤さんの後ろにちょこちょことついていく。
デザートかぁ、何作ってくれたんだろう?
「はい、お待たせ、ポンちゃん」
「さっきから存在感がないミキティもお待たせ」
「一言多いよ……」
れいなが私の前にデザートを置く。
私の隣に座っている藤本さんの前には後藤さんが置いた。
濃い黄色でこの匂い……。これって……。
「カボチャプリン!?」
「そうですよ! ポンちゃんカボチャ好きですよね?」
「うん、好きぃ! ありがと、れいな!!」
さっそく目の前に置かれたカボチャプリンを口に含む。
おいし〜! とても初めて作ったとは思えない!
「美味しいよ、れいな! また作ってね!」
「は〜い! 任せてください!! 後藤さんにレシピ教えてもらいましたから!」
作ってもらった私も、作ったれいなもご満悦。
「ミキティ、美味しい?」
「うん、亀ちゃんが作ってきたマンゴープリンよりは美味しい」
「む〜、なんかムカツクなぁ。あっ、そうだ! ミキティ、あ〜ん!」
「え゛っ!?」
隣から聞こえてきた会話に、思わず私とれいなも振り向く。
後藤さんが、カボチャプリンの乗ったスプーンを藤本さんに突き出していて。
藤本さんも私たちと同じように、完全に固まっている。
「ほら〜、ミキティ〜!」
「いや、無理ムリむり……」
「いつも食べさせてあげてるじゃ〜ん!」
「違っ!! 誤解を招くこと言わないでよ!!」
い、いつもこんなことしてるんだ……。
チラッとれいなの方を向くと、れいなも私の方を向いたようで、パチッと目があって。
なんか照れくさくて、慌てて目をまた後藤さんたちの方に向ける。
「んも〜、しょうがないなぁ」
後藤さんは差し出したスプーンを自分の口に含んだ。
諦めたのかな、とも思ったけど、後藤さんはそのまま席を立って……。
席に座ったままの藤本さんの方へ近づいていく。
「ちょ、ごっちん……? まさか……」
「んふ〜!」
その行動がまさかだったのかどうかはわからないけど……。
後藤さんは藤本さんの顔をガシッと掴んで、そのまま一気に口付けた。
「んんっ!」
「……うわっ……」
れいなが向こうで息を飲むのがわかった。
でも目だけはしっかりと後藤さんたちのほうを見ている。
私もドラマのこんなシーンではいっつも見ないように顔を背けるのに、今はなぜか身動きすらできなくて。
そのまま後藤さんが唇を離すまで、ずっと見つめていた。
「ぷはっ!」
「んっ……」
後藤さんが唇を離したあと、藤本さんが何かを飲み込む。
それはおそらく、後藤さんが口に含んだカボチャプリンで。
藤本さんは見たこともないくらい真っ赤になってた。
「口移し〜! 普通に食べるより甘いでしょ?」
「……バカぁ、紺ちゃんたちの前で……」
私の名前が出たことで、ようやく我に返る。
おたおたと辺りを見回すと、藤本さんを抱きしめたままの後藤さんと目があって。
後藤さんがニヤッと笑った。
「なに、紺野も食べさせて欲しい?」
「えっ!? いえ、私は……」
「あはっ! 遠慮することないのに〜!」
カボチャプリンを持ったまま、ジリジリと歩み寄ってくる後藤さん。
藤本さんにSOSを求めようとしても、藤本さんはまだ放心中で……。
あわわわわ……誰かー!!
「ちょっと、後藤さん! いくら後藤さんといえどもポンちゃんに手出したら許さんとよ!!」
でも寸前でれいなが私を助けてくれた。
にじり寄ってくる後藤さんと私のあいだに割り込んだんだけど……
「ん〜? なんだ、れいなも食べさせて欲しいの〜?」
「え゛っ!?」
れいなが再び固まった。
後藤さんは相変わらずのニッコニコで……。
「じゃあ二人まとめて相手してあげるよ〜!」
「「いやー!!」」
結局私とれいなは、藤本さんが我に返って後藤さんを羽交い締めにするまで後藤さんに追いかけられました……。
◇ ◇ ◇
<後藤真希>
「じゃあ後藤さん、ありがとうございました、いろいろと」
「ごちそうさまでした、後藤さん!」
「んあ〜、いいよいいよ、また来てね〜!」
後ろの方から「ここミキのウチなんだけど……」なんて聞こえてきたけど気にしない。
結局ランチが終わってもいろいろと盛り上がっちゃって。
で、夜になっちゃったから、夕食もご馳走した。
今度はあたしが全部一人で作って、みんな美味しいって言ってくれた。
「じゃあ、気をつけて帰るんだよ〜!」
「「は〜い!!」」
手を繋いで歩いていく紺野とれいな。
いや〜、なんか微笑ましいなぁ。
あたしもたまにはミキティと……いやいや、柄じゃないか……。
玄関からミキティのいるリビングへと戻る。
「ミキティ〜!」
「・・・・・・」
あら、まだちょっとご機嫌ナナメ?
あたしがちょっとふざけて紺野やれいなにちょっかい出しちゃったから拗ねてるみたい。
しょうがないな。ま、ミキティの機嫌を直すのは得意だし。
「ミキティ〜っ!!」
「わっ!?」
ソファに座ってたミキティをそのまま押し倒す。
普段だったらそのままいただきますなんだけど、今回はその前にやることがあるわけで。
ミキティの身体を押さえ、キスするくらいに顔を近づけて、ミキティの目を覗き込む。
「ミキティ……」
「な、なによ……」
「ゴメンね? だけどさ、ごとーが本当に好きなのはミキティだけだよ?」
できるだけ真剣な顔を作って言う。
あたしの下で、ミキティの顔はみるみるうちに赤くなって。
「ゴメンね……もうしないから、許してくれる?」
「わ、わかったよ……」
チョロいなぁ。
そんなことは顔に出さず、そのまま目を閉じて顔を近づける。
ミキティと唇が重なった。
「んっ……」
キスしたままあたしはミキティの身体をそっと撫でていく。
「……って、ちょっとごっちん! なに、またヤる気!?」
「あはっ、そのとーり!! まだ夜は始まったばかりだし!」
「き、昨日いっぱいしたじゃん!」
「ミキティは別腹!」
「意味わかんない!!」
もがくミキティの服を脱がしにかかる。
やっぱりこういうのがあたしたちには似合ってるよね?
それじゃ、改めていただきま〜す!!
Good Night♡
あとがき
いやいや、なんかまとまりないですがこんな感じで……。
中編って苦手なんですよねぇ。
でもまぁごまみき+れなこんで、ちょっとした休日なんかを。
しかしなんつーか、ごっちんがエロいというか節操無しというか……。
いや、こんなごっちんもけっこう好きですけどね(マテ
ごまみきはとにかくエロく(何
れなこんはとにかくピュアに(ぇ
そんな2カップルの夢の共演でした〜!