「あっ、紺野っ!」
「えっ? あっ、後藤さん!」
紺野を訪ねに楽屋まで行こうとしたら、ちょうど廊下でばったり会った。
なんにせよ丁度いい。連れ出す手間が省けた。ついでにみんなにからかわれることもない。
「あのさ、今日仕事終わってから暇?」
「あっ……えーと……」
「?」
パーティーを抜け出そう!
「それじゃあ皆さん、メリー・クリスマース!!」
「メリー・クリスマース!!!」
圭織の乾杯の音頭と同時にあたしもジュースの入ったグラスを手にし、隣に座った紺野のグラスにカチンとあわせる。
今日はどうやらみんな集まってのクリスマス・パーティーの予定が入ってたようで。
どうせだからあたしも一緒に出席する。
集まったのは現役の娘。メンバーにあたしと裕ちゃんと圭ちゃん、それにまっつー。
「後藤さん! これおいしいですよ!!」
紺野は用意された料理をいっぱいお皿に盛ってニコニコ顔。
可愛いなぁ。まぁ、ちょっと不本意だけどこんなクリスマスもいいかも……。
なぁんて思ってたんだけど……
「お〜、ごっち〜ん、ちゃんと飲んでるべかぁ〜?」
「なんだよ、全然飲んでないじゃんかよぉ〜!」
「なっち……やぐっつぁん……」
まとわりついてきたのはグラスとシャンパンを持ったなっちとやぐっつぁん。
やぐっつぁんはまだまだ平素だけど……
なっちはなんかもう顔が赤い……。
「飲むってごとーまだ未成年なんだけど……」
「なんだよノリが悪いなぁ〜」
「居酒屋の娘っしょ? 大丈夫だよ〜!」
「いや、なっち、関係ないから……」
「固いこと言うなよ〜!」
「ダメだって!!」
しつこくお酒を勧めてくるなっちとやぐっつぁん。
あたしも断固として断ってたんだけど……
「しょうがないなぁ。じゃあ紺野、飲め!」
「ぇえっ!?」
「そうそう! これで紺野も大人の仲間入り〜!!」
「わー! そっちのほうがダメだって!!」
あたしがダメだとわかると今度は紺野に勧めてる酔っぱらい共。
紺野の返答も待たずに空のグラスにシャンパンをついでいる。
「なんだよ、紺野ー! オイラの酒が飲めないってのかよー!!」
「お酒なんてジュースと同じだべさぁ〜! きゃははは!」
なっち……全然説得力ないよ……。
てゆーかダメだっつーの!!
「あぁもう!! ならごとーが飲むよ!!」
戸惑ってる紺野の手からグラスをひったくって一気に飲み干す。
口の中に広がるシャンパンの味とアルコール。
「キャハハ! ごっつぁんいい飲みっぷりー!!」
「ごっちん、もう一杯ー!!」
「よっしゃー、じゃんじゃん持ってきやがれ!!」
☆
で……
「あ゛あ゛あ゛ぁぁ……」
「あ、あの、後藤さん……大丈夫ですか?」
「ぎも゛ぢわ゛る゛〜い゛……」
なっちとやぐっつぁんにすっかり飲まされたあたしは完全にノックダウン。
紺野に膝枕をしてもらって、椅子の上で横になっている。
ちょっと向こうでは同じようになっちが潰れている。(まぁ、なっちは自滅だけど……)
そしてその向こうではやぐっつぁんと裕ちゃんにからまれたよしこと梨華ちゃん、ミキティとまっつーがそれぞれ寄り添うようにして潰れている。
なんつーか……死屍累々ってかんじじゃん……。めでたいクリスマスだってのに……。
そのやぐっつぁんと裕ちゃんは圭ちゃんも巻き込んでまだ飲んでいる。
紺野とミキティを除いたゴロッキーズの面々と辻加護は食べることに夢中。もしくはカオリと一緒に遊んでる。
「キャハハ、なんだよごっつぁん、もう終わりかぁ〜?」
「やぐっつぁん〜……」
ダウンしてると視界にやぐっつぁんが入ってきた。
ちょっと顔は赤くなってるけどまだまだ余裕そう。
「そんな恨めしそうな目で見るなよ〜! 最後のほうは自分から進んで飲んでただろ〜?」
「うっさい! うぅ……」
「ちょっと外の風にでもあたってくれば?」
「そうする……」
なんとか立ち上がって歩き出すけど、足がフラフラするし頭はクラクラする。
ダメだ……ホントに飲み過ぎたみたい……。
「ほら、紺野もついてってやりな!」
「あっ、は、はいっ!」
背後でそんな会話が聞こえると、紺野が走り寄ってきてふらつく体を支えてくれた。
後ろをふり返るとやぐっつぁんはこっちを見て微笑みかけてる。
う〜……なんかやぐっつぁんにうまくやられた感じだけど……一応ここは感謝しとくべきかな?
「よっしゃー、まだまだ飲むぞー! 裕子ー! 圭ちゃん!!」
「おお、いいねぇ! 今日は朝まで付き合わせるでー!!」
「飲み過ぎよ、あんたたち……」
あたしはコンノに支えられながら、まだまだ(一部)盛り上がっているパーティー会場をあとにした。
☆
「後藤さん、気分良くなりましたか?」
「ん〜、だいぶ」
紺野と一緒に少しその辺をお散歩。
夜風に当たっているうちにある程度気分もよくなり、酔いも醒めたみたい。
「そうですか、じゃあそろそろ戻りましょうか!」
そういってもどろうとする紺野の手を掴む。
ビックリしてふり返った紺野をそのまま抱き寄せた。
「ご、後藤さんっ!?」
「紺野、このまま帰っちゃおうよ」
「ええっ!?」
「そんでさ、二人でパーティーしよ」
「あっ……」
「ねっ?」
「……ハイ」
そっとあたしの背中にまわされた手。
あたしも負けじと紺野をきつく抱きしめる。
真冬の凍てつく風が通りすぎていくけど、このぬくもりだけは決して消えない。
「あっ、でもそれじゃあ一応先に帰るってみんなに言っておかないと……」
「それは多分やぐっつぁんが上手くやっといてくれるよ」
「そ、そうですか。……あの……ところで後藤さん、ちょっとお酒臭いんですけど……」
「あっ? あはは、ちょっとムードないね……」
紺野の体を離し、一緒に夜空の下を歩き出す。
華やかなイルミネーションに彩られた街中。
通りすぎるたくさんのカップルと同じように、あたしたちも手を繋いで。
「あっ! でも後藤さん……」
「ん〜?」
「私……プレゼント買ってない……」
「えっ?」
「す、すいません! あの……時間なくて……」
「あぁ、てことは今年のプレゼントは紺野ってわけか♪」
あっ、でもこんなおっきなクリスマスプレゼント……
靴下に入りきらないなぁ。
あとがき
クリスマスごまこん編!
なんとなく総登場です。
なんか靴下にすっぽりと入っている紺野も可愛いと思いません?(マテ
そしてなちごま編に続き、パーティーとなるとすぐにお酒をからませる私はダメ人間決定!