春の朝は眠くって
 いつも二度寝しかけちゃう
 でも、隣にあなたがいると
 なぜだかすっきりと目が覚める

 だって、もう一回寝ちゃうよりも
 あなたといちゃいちゃじゃれ合っていたいんだもん!



  ぽかぽか



「ふぁ〜あ……」

 目を覚ますと部屋の中は春特有の柔らかな空気に満ちていた。
 気温は暖かくもなく寒くもなく。でもよく暖まったベッドから抜け出すと、ほんのちょっぴり肌寒い、そんな気温。
 眠気を誘う春の季節。
 一度開いた瞳が、またトロンとしてくる。

 寝ちゃおうかな?
 今日はオフだしね……?
 それにまだ眠いし……

 そのまま身体の向きを変えたけど、その時手に柔らかい感触が。

「んっ……」
「あれっ?」

 そこでようやく思い出す。
 ここなっちの家だった。
 今日のオフが久々に重なったから、なっちの家に泊まったんだった。

 隣に寝てるのはもちろん、愛しい愛しいあたしの恋人。
 さっきまでの眠気は嘘のように消えていた。
 せっかくの休みなら、寝てすごすよりもなっちとイチャイチャしてすごしたい。

「なっち〜」

 まずはそっとなっちの髪に指を梳き入れてみる。
 ふわふわでさらさら〜。
 顔を近づけるとほのかに漂ってくるシャンプーの香りは、あたしの髪と同じ香りでなんか嬉しい。
 そのまま頭を撫でてみるけど、なっちは起きる気配なし。
 撫でるのもいいけど、やっぱりなっちに撫でてもらう方がいいなぁ〜。

「なっち〜っ」

 今度はなっちのほっぺたをぷにぷにと押してみる。

「んっ、ん〜……」

 するとなっちが身をよじって唸った。
 わっ、なんか色っぽい……。
 飛びついちゃいたいところだけど、ここはガマンガマン……。
 だってなっちがうっすらと目を開けたから。

「ごっちん……?」
「なっち〜! ようやく起きてくれた〜!」
「珍しいべさ、ごっちんの方が早起きなんて……」
「む〜! ごとーだってたまには早起きするもん!」

 なっちは目をこしこしとこすってにっこりと笑う。
 あたしはその笑顔に引き寄せられるように、なっちに顔を近づけていく。

「なっち、おはよ……」
「おはよう、ごっちん……」

 そして今日初めてのキス。
 やっぱり朝はこれがないと始まった気がしない。
 そっと唇を離すと、そこには変わらないなっちの笑顔があって。
 たまらずあたしはなっちの頬やおでこにも唇を落とす。

「んっ、ごっちんくすぐったいべさ……」
「あはっ、なっち可愛い〜!」

 ひとしきりなっちにキスの雨を降らせたあと、あたしは仕上げになっちの胸の中に飛び込んだ。
 なっちの体温とあたしの体温が混ざり合う。

「もう、ごっちんは〜!」
「えへへ〜!」

 そんなことを言いながらも、なっちはアタシの背中を優しくさすってくれる。
 それがとっても気持ちよくって温かい。

「ふぁ〜、なんかぽかぽか〜」
「あ〜、もう春だもんねぇ」
「違う〜、なっちがぽかぽか〜」
「そんなこと言ったら、ごっちんだってぽかぽかだよ?」

 二人で顔を見合わせ、笑いあう。
 なんか二人でいると、なんでも楽しくなっちゃう。

「ぽかぽかぁ〜!」
「ぽかぽかぁ〜!!」

 なっちを抱きしめたまま、ベッドの上をゴロゴロと転がる。
 そしてなっちが下になったところで動きを止める。
 なっちの柔らかな笑顔がそこにあって、あたしはまた唇を近づける。

「んっ……」

 唇がくっついたら離し、離れたらまたくっつける、啄むようなキス。
 そうして何度も何度もなっちの唇を味わう。
 仕事でまた何日も逢えなくなっても、ちゃんとなっちの味を覚えておけるように。
 しばらくのあいだキスを繰り返していたけど、あたしの頬を包んでいたなっちの手があたしの背中にまわり、あたしはなっちに抱き寄せられた。

「とりゃっ!」
「んあっ!?」

 そしてまたベッドの上をゴロゴロと転がる。
 今度はあたしが下になって止まった。
 あたしを見下ろすなっちの向こうに部屋の天井が見える。

「見上げるなっちってなんか新鮮だなぁ〜」
「フン、どうせなっちは小さいですよ〜!」

 そんなこと言いながらも、そっとなっちはあたしの上に身体を降ろす。
 心地良いなっちの重みがあたしの身体に加わる。
 なっちの頭を撫でてあげると、なっちもあたしの頭を撫で返してくれた。

「ふぁ〜、なんかまた寝ちゃいそう……」
「んあっ、ダメー! 今日はなっちといっぱいイチャイチャするんだからーっ!」
「はいはい、わかってるって」

 もうかなりイチャイチャした気がするけど、まだ足りない。
 なっちはあたしの上から起きあがって、そっとあたしに手を伸ばす。
 その手を掴むと、あたしもなっちに引っぱり起こされた。
 でもあたしはそのままなっちの胸の中に倒れ込む。

「もぅ! 起きてイチャイチャするんじゃなかったの?」
「起きるよ! 起きるけど〜、もうちょっとこのままがいい〜」
「ほんと甘えたなんだから。いくつになっても変わらないねぇ」
「なっちだって嬉しいくせに〜!」
「そりゃ嬉しいよ。だってそんなにも長い時間、ずっと一緒にいられたってことだもん」

 思わず顔を見上げると、余裕たっぷりななっちの笑顔が近づいてきて。
 「なっちには敵わないなぁ」と思いつつ、なっちのキスを受け入れる。

「だからこれからもずっと、なっちのそばで変わらずにいてね?」
「うん!」

 ギューッとなっちを抱きしめて、ようやくあたしはベッドから降りた。
 なっちもベッドから降りて、あたしのとなりに立つ。

「それじゃ、朝ご飯つくろ〜!」
「うん! 何が食べたい、ごっちん?」
「えっとねぇ〜、えっとねぇ〜……」

 離れないようにキュッと手を繋いで
 あたしたちはぽかぽかと暖まった寝室をあとにした。


 なっちとの時間は早くって
 いつもすぐに終わっちゃう
 でも、あたしの心の中には
 ちゃんとあなたが補給されてる

 心も身体も、両方ともぽかぽかにしてくれる
 そんなことができるのは、なっちだけ!






あとがき

久しぶりのなちごまです。
感じとしては、春っぽいなちごま。
あ〜、やっぱなちごまでの甘えたごっちんはいいですねぇ〜!
もちろんお姉さんななっちもステキですが!

( ´ Д `)<戻るよ!