今日もようやく仕事が終わって家に帰る。
 途中、ちょっと寄り道をしてお買い物。
 今日はクリスマスイブ。街は色とりどりのイルミネーションと、聖夜を楽しむ恋人たちであふれている。

 そして最近会えなかった私の恋人は……
 一足先に私の家で帰りを待ってくれている。



  恋人はサンタクロース



「ただいま……」
「メリー・クリスマース!!」

 扉を開けた瞬間に飛びついてきたごっちんはなぜかサンタクロースの格好。
 パーティーの用意はしとくって言ってたけど……まさかここまで……。

「ご、ごっちん、なんだべ、その格好は?」
「見てわかるでしょー、サンタクロースだよ! それでプレゼントはぁ……えーと……ご、ごとー自身……みたいな……」

 ごっちん……言いながら自分で照れないで……。
 こっちまでよけいに恥ずかしくなるから……。

「えーと……もう用意はできてるの?」
「あっ! 話はぐらかしたな! ちゃんともらってよ〜!」
「え〜、だってもうもらってるよ。だいぶ前に」
「むぅ……」

 着ている衣装みたいに赤くなっちゃったごっちんをそっと抱きしめて頭を撫でる。
 まったく、本当にかわいいよ。

 いつもは大胆なのに、たまに急に恥ずかしがり屋さんになっちゃって。
 でも基本はやっぱり大胆だから……
 照れてた顔が急にニパッと輝いて……

「だったらごとーにもプレゼントちょーだいっ!!」
「ええっ!? ふつーサンタさんにはプレゼントあげないっしょー!」
「プレゼントはなっち自身ね! けってーい!!」

 急にギューッと抱きしめてきたごっちんにちょっと焦りつつも、それは一応大人の余裕ってヤツで、もう一度ごっちんを抱きしめ直す。

「それももうずっと前にあげたっしょ?」
「そっか、そうだね。じゃあプレゼントはキスでいいや」
「ごっちんが先にくれたらなっちもあげるよ?」

 ごっちんの肩にのせた顔だけをそっとはなす。
 そのまま目を閉じてスタンバイオッケー。
 何回しても慣れてくれない、この目を閉じているあいだのドキドキ。
 細くてしなやかな手が頬に触れるときのそこだけ熱を持ったかのような錯覚。
 そして重ねられる甘い唇でとろけそうになってしまう感覚。


 少ししてから唇が離される。
 目を開けると、今度はごっちんが瞳を閉じる。
 そっと腕を首にまわし、つま先立ってまた唇を重ねた。


「で、ごっちん、もう準備は終わってるの?」
「うん、できてるよ〜! こっちこっち!」

 ごっちんに促されるままにリビングへ入る。
 すると部屋中に飾られているたくさんの飾りと、テーブルいっぱいに並べられてる料理が出迎えてくれた。

「うわぁ、すっごーい! これ全部ごっちんがやったの?」
「ん、飾り付けはそうだけど料理はちょっと家で作って持ってきたんだ。お姉ちゃんとかお母さんとかこき使って……。あっ、じゃなくて手伝ってもらって!」
「・・・・・・」
 嗚呼、ごめんなさい、ごっちんのご家族の皆さん……。
 ごっちんはたまに私のことになると見境なくなってしまって……。
 ま、ちょっと嬉しかったりもするんだけどね。


「あっ、そうだごっちん、飲み物買ってきたよ。なかったでしょ?」
「あっ、そうなの! ありがと〜、なっち!!」
 途中で寄り道して買ってきたジュースをごっちんに手渡す。
 ごっちんはさっそくグラスにジュースをつぎ始めた。
 私も自分用に買ってきた飲み物を出してグラスにつごうとしたけど……

「……なっち、何それ……?」
 ごっちんはジュースをつぐのをやめて私の手にある瓶をいぶかしげに見ている。
 何って言われても……

「シャンパンだけど?」
「シャンパンって……アルコール……」
「そりゃ入ってるよ?」

 普段はそんなに飲まないんだけど、まぁ、こんな時くらいはねぇ。
 コルクを開けようとしたけど、次の瞬間にはごっちんに瓶ごと奪われた。

「あっ! ごっちん! ごっちんは飲んじゃダメだべ! まだ18っしょ!?」
「なっちだって飲んじゃダメぇ! 弱いじゃん! すぐ酔っちゃうんだから!」
「そ、そんな酔うくらい飲まないべさ! ちょっとだけにしとくから!」
「ダメ! この前のごとーの誕生日の時はごとー酔ったなっちに襲われかけたんだから!!」
「えぇっ!?」
 わ、私がごっちんを!?
 だって普段はだいたい逆……ってそうでなくて!
 ていうかあの時お酒なんか飲んだっけ……?
 リンゴジュース飲んだ記憶しかないんだけど……。

「なっち覚えてないのぉ!? ごとーにあんなことしたのに!?」
「あ、あんなことって……!? なっちごっちんに何したんだべか!?」
「ん〜とねぇ……」

 ごっちんは私から奪った瓶をテーブルの上に置くと、いきなり私のほうに倒れ込んできた。
 って、えぇっ!? この展開って……。

「ご、ごっちん、ダメだべ! なっち心と体の準備がまだ……」
「あはっ! 違うよなっち、えっちぃなぁ」

 ジタバタ暴れても私の力では到底ごっちんに敵わない。
 ごっちんはさっきグラスについだジュースを手にとって飲み干した。

「ごっちん……? 何するんだべか?」
「んふふ〜」
 ごっちんはニヤッと笑うと空のグラスをテーブルに置く。
 そのまま手は私の手に重ねられ、指と指が絡まった。
 そして……

「んんっ!?」
 急に口を塞がれてビックリしていると、ごっちんの口から液体が流れ込んでくる。
 ごっちんは口を離してくれなくて、どうしようもないからそのまま飲み込んだ。
 ごっちんの口から注がれたジュースはなぜかとても甘く感じた。

「……ぷはっ!」
 唇を離すとそのまま口から零れたジュースを舐めとってくれるごっちん。
「んっ!」
 首筋を舐められたとき思わず声を漏らしてしまったけど、ごっちんがそんなことを聞き逃すはずがなくて……

「あれ〜? なっち感じちゃったぁ?」
「か、感じてないべさ!」
「こぉんなことごとーにしてきたんだよ! ホントはもう一回されたんだけどちゃんと再現しとく?」
 ブンブンッ、っと首を大きく横に振る。
 ごっちんは「ざんねぇん」なんて言いながら私の上からどいてくれた。
 見なくてもわかる。今の私の顔は絶対真っ赤に染まっているはず。


「ごっちん、ごめんね?」
「いいよ、ごとーだってホントはちょっと嬉しかったし……」
「えっ?」
「まぁどっちかっていうとごとーはなっちを攻めてる方が好きなんだけどさぁ」
「・・・・・・」
 今なんかとんでもないことをサラッと言ったような……。
 まあいいや、聞かなかったことにしとく。
 それよりもそろそろごっちん(とごっちんのご家族の皆さん)が作ってくれた料理を食べよう。


「ごっちん、なっちのグラスにもジュースついで?」
「あれ〜? ジュースでいいのぉ? シャンパンは?」
「ジュ、ジュースでいいから……」

 グラスがジュースで満たされるとごっちんのグラスとカチン、とあわせる。

「メリークリスマス!」
「メリクリ〜!」

 最初はテーブルを挟んで向かい合ってごっちんが用意してくれた料理を食べていたけど……。
 ごっちんはすぐに私の隣にすり寄ってきて。

「なっちなっち、あ〜ん!」
「え〜?」
「早くぅ!」
「まったく……甘えただなぁ」
「なっちの前だとね!」

 ごっちんのリクエストにお応えして食べさせてあげると、ごっちんはすぐにふにゃっと笑う。
 この笑い方がとっても好き。
 見てるだけで幸せになっちゃう。

「じゃあなっちも! ほら、あ〜ん!」
「えぇっ!? なっちはいいべさ!」
「食べさせてもらうだけじゃ悪いも〜ん! ほら、あ〜ん!!」
「う、うん……あ〜ん……」
「……おいしい?」
「……うん、おいしい」

 口の中の料理を飲み込んでごっちんの方を向くと、いきなりそのまま抱きしめられた。
 ちょっとビックリしたけど、抵抗せずにごっちんに身を委ねる。

「……どしたの、ごっちん?」
「ん〜、なんとなく。幸せだなぁ、っておもってさ、好きな人とクリスマスを過ごせるのって」
「なっちも幸せ。ごっちん、来年になってもずーっと一緒にいようね」
「来年だけじゃヤダ! 再来年も、その次も、ずーっと、ずーーーっと一緒!」
「……そだね、ずっと一緒」

 私を抱きしめていたごっちんは、今度は私の胸元にすり寄ってくる。
 ちょっと体勢上キツイと思うんだけど……。
 でもごっちんの頭をそっと抱きしめる。

「ごっちんの甘えたはいつなおるのかなぁ?」
「なっちといる限りなおらない!」
「じゃあ一生なおらないかもね?」
「それでもいいよ〜!」


 あなたは甘えただったり大人びてたり、
 イジワルだったり優しかったり……
 いろいろな表情を持っているけどそのすべてが愛しいよ。

 ごっちん、この先もずっと私の隣で、
 たくさんのごっちんを私に見せてね。


 今日、ごっちんサンタが持ってきてくれたものは、
 「愛」という最高のプレゼント。






あとがき

クリスマス小説なちごま編!
とにかく甘くて甘えたどえす!
一応「禁断の果実」から続いてたり。ていうか「禁断の果実」の逆バージョン!

(●´ー`●)<戻るべさ。