「あはっ、田中可愛いなぁ〜!」
「そ、そんな……後藤さん、からかわないでください……」
「からかってないよー! ホントに可愛いって思ったんだもん!」
「あっ、ちょっと! 後藤さん!!」


 アタシが亀井ちゃん&シゲさんとちょっとジュースを買いに行ってる間にごっちんがモーニング娘。の楽屋に遊びに来てたみたい。
 まぁそれはいいんだけど、問題はアタシたちが帰ってきたときごっちんが田中ちゃんといちゃついてたってこと。
 ごっちんは笑顔で田中ちゃんを後ろから抱きしめ、田中ちゃんは真っ赤になって、ごっちんの腕の中で固まっている。

 「いつものれいなじゃない……」とか「れーなキャラ違う……」とかシゲさんと亀井ちゃんが話しあってるあいだ、アタシはずっと目が離せなかった。



  LOVE SICK



「……ごっちん最近田中ちゃんと仲イイよねぇ……」
「ん〜、まぁねぇ」

 仕事が終わり、アタシの部屋に帰ってきて、ついつい今日思ったことをぶつけてしまう。
 でも隣に座ってるごっちんはお菓子を頬張りつつ軽ーく答えてくれた……。

「なぁんか田中ってごとーに似てるっていうか……なんかあんな妹いたらいいかも、って思って」
「妹……ね……」

 ごっちんは妹でいいかもしれないけど……田中ちゃんは一体どう思ってるんだか……。
 楽屋での様子を見る限りではまんざらでもないような……。
 う〜ん……やっぱり釘刺しておいた方がいいかなぁ?


「そんなことよりさ、ね、せっかく久しぶりに会えたんだから……ミ・キ・ティ!」
 すっと手が頬に伸ばされて……
 そのあとすぐに唇が重なる。

「ここでする? ベッド行く?」
「……ベッド……」
「おっけ〜!」

 そのまま抱きかかえられて、薄暗い寝室まで運ばれる。
 優しくベッドの上に降ろされると、ごっちんが覆い被さってくる。
 また重なる唇。優しいキスから、だんだん激しいキスへ。


「けっこー久しぶりだからさぁ。ちょっとガマンできないかも」
「ほどほどにしてよ? 明日もお互い仕事なんだし……」
「とか何とか言っちゃってぇ。嬉しいくせに!」
「……うっさい!」

 でもごっちんに抱かれてるときでも……
 なぜか田中ちゃんの顔が浮かんだ。


 翌日。
 忙しかった仕事も終わって、アタシは帰る準備を整える。
 今日もごっちんは一緒の仕事だったから……一緒に帰ろうかな?

「それじゃ、おつかれさまでした〜!」
「おう! じゃあな、ミキティ!」

 矢口さんの元気な声が響くモーニング娘。の楽屋をあとにして、アタシはその足でごっちんの楽屋に向かう。
 今日はそんなに離れてないので、少し歩くとすぐに着いた。

  コンッコンッ!
「んあ〜?」
「ごっちん! 一緒に……」
 「帰ろう」とは続けられなかった。
「あっ、藤本さん。お疲れ様です」
 なんで!? なんでここに田中ちゃんがいるわけ!?
 ごっちんの楽屋では田中ちゃんがごっちんと仲良さそうにソファに並んで座っていた。
 そういえばモーニング娘。の楽屋にいなかったような……。

「どうしたの、ミキティ?」
「え、えっとぉ……」
 「どうしたの?」と聞かれても返答に困ってしまう。
 田中ちゃんのほうをちらっと見ると、田中ちゃんはバツが悪いように目をそらした。


「あっ、ごめん、ミキティ。ごとーこのあとちょっと用事できたんだ。悪いけど先に帰っててくんない?」
「……わかった……」

 居心地が悪くてさっさとごっちんの楽屋を出た。
 そのあと少しするとごっちんの楽しそうな声が聞こえてきた。
 田中ちゃんと何話してるの? 何してるの?
 知りたいけど……怖い……。
 結局そのままあたしは一人で家に帰った。


 家に帰ってからもアタシは何もする気にもなれなかった。
 ソファに座って玄関のドアをただジーッと見てるだけ。
 ごっちんはまだ来ない。

 ごっちん……今どこにいるの? 何してるの?
 誰かと一緒にいるの?
 まさか……田中ちゃんと……


 浮……気……?
 その言葉がそこまで出かかっている。
 必死に考えないようにするけど、否定しきれる自信はない。
 ごっちんのバカ……ロリコン……。
 するとその時、玄関の鍵がガチャッと開いた。


「ごめーん、ミキティ。ちょっと遅くなっちゃった」

 合い鍵をあげた人なんて後にも先にも一人しかいない。
 入ってきたのは当然ごっちんで。
 そのにこやかな顔を見ると、逆にアタシの心はイライラした。

「ホントに……遅かったねぇ」
「うん。ちょっと田中と話し込んじゃってさぁ。遅くなったから一応送ってきた」

 やっぱり……田中ちゃんなんだ……。
 そんなアタシの思いもお構いなしにごっちんはアタシのとなりに腰を下ろす。


「ねぇ、ごっちん……ホントに話してただけ?」
「えっ?」
「田中ちゃんと……」
「ミキティ?」

 聞きたいような聞きたくないような。
 それでも結局不安に押しつぶされそうで口を開いてしまう。
 自分でも嫌なヤツだなぁ、って思うけど……

「最近ごっちん、田中ちゃんと仲良いよねぇ?」
「・・・・・・」
「もしかしてごっちん、田中ちゃんと……」
「違うっ!!」

 アタシがすべて言い切る前に、アタシの言葉はごっちんによってさえぎられた。
 普段のごっちんからは考えられない、強い口調。

「違うよ、ミキティ! ごとーと田中はそんなんじゃない!」
「じゃあ……なんで最近いつも一緒にいるのよ!? 今日だって! 一体何話してたって言うの!?」
「それは……」

 ごっちんは一瞬言いづらそうに口ごもったけど、何かを観念するように一回大きく溜め息をついた。


「……田中は亀井のことが好きなんだって」
「はぁ?」

 思いっきり話が飛んだので、思わず素で返してしまう。
 ていうか田中が亀ちゃんを? ごっちんの事を好きだったんじゃないの!?

「初めてなんだってさ、人を好きになるのって。それで田中悩んでて最初は道重に相談してたみたいなんだけど、道重もよくわからないからってごとーが頼まれて相談に乗ってあげてたの。ほら、ごとーと田中ってなんか似てるし、ごとーも1コ上のミキティと付き合ってるしさ」
「……そうだったの?」
「そうだよ。まぁちょっと体験談とか語ったり、あとはテクニックとか教えたり」
「テ、テクニックって……なんの?」
「んふっ! まぁ、いろいろ!」

 そっとごっちんの腕が首に絡みついてくる。
 そしてグッと引き寄せられた。
 超至近距離で瞳と瞳が重なる。

「ごとーが本当に愛してるのはミキティだけだよ……」

 すぐに今度は唇が重なった。
 甘く、優しいキス。
 なんか、今までつまんない嫉妬してたのがバカみたいに思えるほど、ごっちんの心がこもったキス。


「信じて……くれた?」
「うん……ミキもごっちんの事愛してる……」

 ごっちんはニコッと笑ってくれたけど……
「……てゆーかさぁ……」
 いつもはちょっとたれてる目が釣り上がったかと思うと、急にごっちんが力をかけてきて、アタシはそのままソファに押し倒された。

「ミ〜キ〜ティ〜! なに、ごとーってばそんなに信用ないわけ?」
「ち、違う! そうじゃなくて……」
「許さ〜ん!! 罰として今日は寝かさないからねぇ!」
「ぇえっ!? ミキ明日も早いんだけど!」
「ごとーはオフだも〜ん!」

 ジタバタ暴れるけど、アタシはごっちんによって寝室まで連れて行かれて……
 今日はちょっと乱暴にベッドの上に落とされた……。

「もうミキティが余計なこと考えないように、ごとー色に染めてア・ゲ・ル♡」
「すでに充分染まってるよ」


 あなたのことしか考えられないから……
 たまにヤキモチ焼いたり、不安になっちゃったりするんだよ?
 でも……まぁいいか……。
 ケンカもたまにはいいスパイスになるかもね。

 そしてアタシはそっと目を閉じた。



「れいな、れいな!」
「あっ、さゆ」
「どうだった? 後藤さんに相談して解決した?」
「……ううん……」
「えっ? ダメだったの?」
「だって……延々とノロケ話聞かされただけだし……」







あとがき

浮気疑惑?のリクもらって約2ヶ月(死
すいません、お待たせしました。
疑惑相手は誰にしよーかなーといろいろ考えたのですが、やっぱり最近ハマってる田中に!
ちょっとだけれなごまでれなえりです。
しかし……なんか「ちょこっとエロ」がごまみきの基本になってきてるような……。

川VvV从<戻るよ!