「ふぁ〜……」
 あくびをしながら自分の部屋に入る。
 今日の仕事が終わって、家まで帰ってきて……なんかすっごい眠い……。
 今日は結構仕事が早めに終わったけど明日は朝が早い……。
 さっさと寝よう……。



  Sleepless Night



 軽めにシャワーを浴び、出るとドライヤーをかけて髪を乾かす。
 体もあったまって眠気も最高潮に。
 睡眠欲に任せてそのままベッドにもぐりこんだ。
 でも……


「……ん〜……寝れない……」

 なぜだかぜんぜん寝付けない。
 足が少し痛いくらい体は疲れているし、目を開けてるのが辛いくらい睡魔も襲ってきてるっていうのに……
 こんな時に限って風が窓を叩く音や、時折聞こえる微かな物音がやけに気になる。
 ベッドの中で体の向きを変えたり布団に頭までもぐってみたりするけどやっぱり寝付けなかった。

 なんとか寝ようと本なんか読んでみても効果なし。
 柄にもなくヒーリングミュージックのCDなんかもかけてみたけど今はその音すら耳障りだった。


「あーもぅ! まったく……」
 コンポを止めてベッドの上に起き上がる。今は何をしても眠れる気がしない。
 さてどうしようか、と思っていると目覚まし代わりにセットしておいた携帯が目に入った。

 なんとなく……声が聞きたくなった。


 携帯を手にとって名前を探す。
 名前は簡単に見つかった。だって着信履歴も発信履歴もほとんどが同じ名前で埋め尽くされてるから。

 今、何をしているだろう?
 仕事は……もう終わってるはず。
 遅めの夕食でも食べてるのかな? 誰かと遊びにいってるのかな?
 それとも……アタシと同じで眠れぬ夜をすごしてたりして。
 アタシはそっと発信ボタンを押した。


『……もしもし?』
「もしも〜し!」
『どしたの、ミキティ?』
 ごっちんはすぐに電話に出てくれた。
 それだけでアタシの顔は笑顔に変わる。

「ん〜、ごっちんの声聞きたくなっちゃって」
『なにそれぇ?』
 電話の向こうからかすかに車の音が聞こえてくる。
 どうやらごっちんは今外にいるみたい。

「なんか今日眠れなくてさぁ」
『じゃあごとーが子守唄でも歌ってあげようか?』
「お願いしちゃおっかなぁ?」
『アハハ、りょーかい!』
 ごっちんに子守唄なんか歌われたらアタシはすぐにでも眠っちゃうよ。

 そしてしばらくアタシはごっちんと電話で話していた。
 たまには眠れない夜もわるくないかも。


  ピンポーン!!

 そのとき急にインターホンが鳴った。
 誰か来たみたい。誰だろ?

『あれっ? お客さんじゃないの?』
「うん、ちょっと待ってて」
 そのままドアまで歩いていく。
 まったく……誰だよ、こんな時間に……。
 しかもせっかくごっちんと楽しくおしゃべりしてたっていうのに……邪魔しやがって!
 少し不機嫌気味にドアを開ける。
 するとそこにいたのは……

「ぐっどいぶに〜んぐ!」
「えっ……?」
 さっきまで電話から聞こえてたのと同じ声。いつもと変わらない笑顔。
 そこにいたのは今一番会いたかった人。


「ご、ごっちん? 何でここに!?」
「アハハ、実は近くまで来てたんだよね。だから依頼どおり子守唄歌いに来てあげました!」
「えっ、本気だったの!?」
「ん〜、まぁミキティに会いたかったってのもあったけどね!」
 ドアを閉めると同時に不意打ちのキスをされ、そのままギューッと抱きしめられた。
 アタシもそっとごっちんに身を委ねる。
 こうしてごっちんに包まれるのはとっても心地良くて、とっても温かくて。
 それだけでだんだん眠たくなってしまう。


「ミキティ眠いの?」
「うん……眠い……」
「寝れそう?」
「ごっちんと一緒なら……」
「そっか。じゃあ一緒に寝よう」

 ごっちんに手を引かれて寝室へ。
 一足先にベッドに入って待っていると、パジャマに着替えたごっちんもアタシのとなりに入ってきた。
 ごっちんの方に向き直ると、またごっちんの温もりに包まれる。
 そしてどんどん意識が薄れていく。
 今度はちゃんと眠れそう……。

「ありがと、ごっちん……眠れそう……」
「そっか、ゆっくり休んでね」
「うん……おやすみ……」
「オヤスミ」



 不思議だね……あなたがいるだけで

 眠れない夜も幸せな夢に変わる。



 ふわっとごっちんにキスされた。
 でもそれは現実だったのか、それとも夢だったのか……。


 アタシの意識は温かな夢の中へと墜ちていった。




  ♪〜♪〜♪〜♪〜

 目覚まし代わりの携帯の着メロで目を覚ました。
 目を開けるとそこは日の光が溢れている部屋。
 となりを見るとごっちんはいなかったけど、キッチンの方からいい匂いが漂ってくる。
 その匂いに誘われるようにベッドから出るとキッチンへ向かった。

「あっ、ミキティおはよう! よく眠れた?」
 キッチンに入るとごっちんがパタパタと近寄ってきて……
 そして1回だけおはようのキス。

「……なんか夢にもごっちん出てきたよ……」
「ふ〜ん、ごとーたち何してた?」
「……今みたいにキスしてた。ミキとごっちんしかいない場所でずっと、ずーっと……」
「あはっ、夢じゃないかもね! 顔洗ってくれば?」
「ん、そうする……」

 まだ寝ぼけ気味な頭で洗面台まで歩いていく。
 水をすくって顔を洗い、鏡を見て気づいた。

 ……なんか首筋に虫さされみたいな跡があるんですけど……


 こすっても消えない赤い跡。
 これって…………まさかっ!?
 寝ぼけてた頭が一瞬で覚醒した。



「ごっちーんっ!!」
「おぉ、どうしたの、ミキティ? 虫にでもさされてた?」
「これ虫さされの跡じゃないじゃん! キスマークじゃんか!!」
「ぬはは、夢じゃなかったねぇ! でもミキティが可愛かったし、無防備だったから。これで半目じゃなかったら最後までヤっちゃったんだけどさぁ」

 にこやかに笑うごっちんの前でアタシは脱力するしかなかった。


 ごっちんの見せてくれる夢の世界は甘くて温かくて心地良いんだけど……

 そのあとの現実世界はナイトメアだよ……まったく……




「ふ、藤本ぉ!! あんた自分がアイドルだってことちゃんと自覚してるの!? そんなトコロにそんなモン付けてきてぇ!!!」
「・・・・・・」

 その日のモーニング娘。の楽屋。
 アタシは少しだけ顔を赤らめた飯田さんに通常の1.5倍くらいの勢いで説教されて……
 さすがのアタシも何もツッコめなかった……。




「ふぅ〜ん、アイドルって虫に刺されてもいけないねんなぁ」
「えぇっ!? まずいのれす、辻はO型なのれす。矢口さんどうしましょう!?」
「いや、どうもしないでいいから……」






あとがき

とにかく甘々々なごまみきを書きたくて書きました(マテ
ミキティ翻弄されすぎです。幸せなんだか不幸なんだか。いや、幸せでしょう!(断言!
もうとにかく甘々サイコー! ごまみきサイコー!! 攻めごまサイコー!!!

ついでにこのタイトルは「眠れない夜」の話を書こうってことでファーストインプレッションで付けました。
確かこんなフレーズが入った歌があったと思うんですけど……
なんだっけなぁ……? どうしても思い出せない……

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