「ん〜……?」

 真夜中唐突に目が覚めた。
 普段はそんなことほとんどないのに、何故だろうと考えてみる。

 原因はすぐにわかった。
 隣で寝ているポンちゃんが掛け布団をほとんど持って行ってしまったからだ。
 起こさないように、なんとか掛け布団を取り返す。
 まぁ、それだけが原因では決してないのであって……

「う〜、さすがにそろそろ裸で寝るのは厳しいかなぁ……」

 布団にくるまりながら思う。
 や、いっつも裸で寝てるわけじゃないけどね。
 その……特別なときだけ……。

 それにしても冷えるなぁ……。
 なんて思いながらふと体を起こすと、カーテンの隙間から白い光が見えた気がした。
 もしかして……
 カーテンをめくって窓の外を見てみると……

「わぁ……雪だ……」

 濃紺の夜空に踊る白。
 舞い降りてくる綿毛たち。
 この冬初めての雪が、夜の静寂を壊さぬように深々と降っていた。



  夜の雪華



「んっ……れいな……?」

 あたしはしばらくそのまま夜の雪に見入っていたけど、背中に聞こえた声でようやく我に返った。

「あっ、ポンちゃん……すいません、起こしちゃいましたか?」
「ううん、それはいいんだけど、どうしたの?」

 ポンちゃんもむくっと起きあがる。
 起こしちゃったのは悪かったけど、でもそれならせっかくだし……。

「ポンちゃん、雪降ってますよ!」
「えっ、本当!?」
「はい! 夜の雪ってすっごくキレイですよ! 一緒に見ましょう!」
「わっ、ちょ、ちょっと待って!」

 あたしは降り出した雪に、完全に舞い上がっていて。
 ポンちゃんを急かすけど、ポンちゃんは落ち着いていて、掛け布団の中から毛布を一枚取りだした。

「れいな」
「えっ、うわっ!?」

 そしてマントのように毛布を羽織ると、あたしはそのままポンちゃんに背中から抱きしめられた。
 ポンちゃんがあたしを抱きしめていて、そのあたしたちを毛布が覆っていて。

「そのままじゃいくらなんでも寒いでしょ?」
「あっ、そ、そうですね……」

 今まではちょっと寒さも感じないほど雪に夢中だったみたい。
 確かにこれならそんなに寒くはないんだけど……。
 その……当然ポンちゃんも裸なわけで……。
 こんなふうにされたら、どうしても背中に……ふくらみが……。

「ほら、こんなに身体冷えちゃってるし」
「わわっ!」

 ポンちゃんはさらにきつく抱きしめてくる。
 てことはもれなくもっと背中に感触が……。
 さすがにまた押し倒しちゃうと、体力と睡眠時間がヤバイ……。

「わ〜、本当に雪降ってるね〜」

 ポンちゃんはそんなこと気にしてる様子はなく、あたしの肩越しに窓の外を眺めている。
 あたしもなんとか雪へと意識を集中する。

「れいなのふるさとはあんまり雪って降らないんだよね?」
「はい、だからすっごく好きなんですよ! ポンちゃんのふるさとはあんまり珍しくもないんですよね?」
「うん、冬になるといっつも降ってるし」

 でも、とポンちゃんの顔をそっと盗み見る。
 ポンちゃんはとっても楽しそうで。

「そのわりには楽しそうですね?」
「えっ? だって今日はれいなと一緒だから」

 うわっ、ちょっと……その笑顔反則……。そのセリフも反則……。
 でも……なんか幸せ……。

「れ、れいなもポンちゃんと一緒に雪見れてよかったと!」
「ふふっ、ありがと。今年はもうすぐ終わりだけど、来年もこうして一緒に雪見ようね?」
「はいっ!」

 それは来年もずっと一緒にいようということ。
 あたしもまたポンちゃんと一緒に雪を見たいと思う。
 や、このシチュエーションはちょっと勘弁かもだけど……。


「さて、そろそろ寝ないと。明日起きられなくなっちゃう」
「そうですね……」

 ちょっと名残惜しいけど、ポンちゃんの言うことももっともで。
 あたしはカーテンをまた閉め、布団の中へと戻る。
 ポンちゃんも毛布を戻してから、あたしのとなりに潜り込んだ。

「ポンちゃん、その……今日寒いんで、もうちょっとくっついていいですか?」
「えっ? う、うん……」

 ちょっとだけポンちゃんの方に寄る。
 意を決してもうちょっとだけ。
 枕の端ギリギリまで寄ると、ポンちゃんも同じように枕の端まで寄ってきた。
 すぐ近くにポンちゃんの顔があることがドキドキして、でも少し嬉しかった。

「おやすみ、れいな」
「はい、おやすみなさい、ポンちゃん」

 布団の中で手と手がコツンとぶつかった。
 だからそのままポンちゃんの手を握りしめた。

 今日はこのまま手を繋いでいよう。
 明日雪が積もったら、ポンちゃんと一緒に遊ぼう。
 そんなことを考えながら、あたしはもう一度目を瞑った。






あとがき

こちらも短編はわりと久々なれなこん。
今回はごまみきも絡んでこない、純度100%なれなこんです。
しかしクリスマスまったく関係なし!(爆
流れから言って次のれなこんは裏か終わったあとかなぁ、と思ってたのですが、まだちょっと裏は書く勇気がなかったので、あとのほうで(笑

从 ´ヮ`)<戻るけん!