結局買い物から帰ってきたのは夕方近くになってしまって。
 そのあとちょこちょこと紺野と遊んでいたらすぐに日が暮れてしまった。

 買い物の時に買ってきた食料で、夕食を作る。
 紺野はその様子をジーッと見てて。
 料理に興味でもあるのかな、と思ったけど、ピコピコ耳が動いてる様子を見ると、どうやら作る過程より、できあがる夕飯のほうが楽しみな感じ。
 そういや昨日もお昼も、ご飯は全部ペロッと平らげてたなぁ。


 どうやらやっぱり紺野は食いしんぼみたいで。
 あたしの作った夕飯もすぐに平らげてしまった。
 そして夕飯のあとはこちょこちょっと紺野で遊んで。
 夜もけっこう更けてきた。



  BATH ROOM



「んあっ? もうこんな時間かぁ」
「あっ、本当ですねぇ」

 膝の上にある紺野の頭を優しく撫でる。
 猫耳がふわっと動いて、紺野が首をひねったのがわかった。
 そのあとでこしこしと紺野が目をこする。
 あはっ! 本物の猫っぽいなぁ。

「眠いの、紺野?」
「はい、ちょっと……」
「んじゃ、早めに寝ようか?」
「はい、そうですね」


 今日はしゃぎすぎて疲れちゃったのかな?
 紺野はむくっと起きあがるけど、まだちょっとボーっとしてるみたいで。
 それでもなんとか買い物袋の中から真新しいパジャマをとりだした。

「それじゃあ、お風呂入ろっか?」
「はい、そうですね……」
「じゃあ、行こう!」
「はい……って、一緒にですかっ!?」

 あはっ! 反応遅〜い!
 ま、そんなところが可愛いんだけどね。
 紺野はすっかりと眠気が吹っ飛んだみたいで、尻尾をピーンと硬直させていた。

「ほら、行くよ〜!!」
「や、やっぱり私はあとでいいです〜!」
「なに言ってんの。ペットを洗ってあげるのも飼い主の役目でしょ〜?」
「じ、自分でちゃんと洗えますから!!」
「いいからいいから!」
「あぁあ〜……!!」


「ほら、さっさと紺野も脱いで脱いで!」
「ご、後藤さん、自分でできます〜!!」
「ま、いいからいいから」
「はうっ!」

 お風呂場まで紺野を引っ張ってきたあたしは、恥ずかしがる紺野の服をテキパキと脱がせていく。
 スポーンと下着を剥ぎ取ると、紺野はあわててバスタオルを巻いた。

「ほら、入るよ〜!」
「うわっ、ちょっと、後藤さん!!」

 紺野の背中を押してバスルームへと入っていく。
 そして紺野を椅子に座らせ、あたしはその後ろに座り込む。

「さ〜て、それじゃあ洗ってあげますか!」
「じ、自分で……わぷっ!」

 紺野の頭にお湯をかける。
 耳がピコピコと動いて、お湯を払った。

「ほら、痒いとことかない?」
「だ、大丈夫です……」

 シャンプーを付けてワシャワシャと紺野の髪を洗う。
 時々耳をくすぐると、紺野の身体がピクッと跳ねる。
 ヤバイ、本当に可愛い……。
 シャンプーのあとリンスして、またお湯で流す。

「さ〜て、次は身体だね〜!」
「か、カラダッ!?」
「覚悟しなさい、子猫ちゃん!!」


「あ、あの、後藤さん……」
「ん〜?」

 あのあとちゃんと紺野の身体もスミズミまで洗ってあげて。
 ついでに自分の頭と身体も洗ってから、ようやくお風呂に浸かったんだけど……。

「そ、その……」
「なぁに?」
「ひゃっ!?」

 目の前にあった紺野のうなじにチュッとキスすると、紺野の身体が腕の中で跳ね上がった。
 そんな紺野が可愛くて、あたしは背中からギューッと抱きしめる。

「ご、後藤さん、離してください〜!!」
「ダーメ! だって紺野が可愛すぎるんだもん!」
「あっ、わ、私もう上がります! のぼせちゃいますから!!」
「え〜? しょうがないなぁ」

 腕を解いてやると紺野はパタパタとバスルームを出て行ってしまった。
 あたしも一緒に上がろうかな?
 そう思い、あたしも紺野を追う。


「紺野、買ってきたパジャマ着てみせてよ」
「は、はい」

 紺野のパジャマは紺色と白のチェックのパジャマ。
 簡単に言っちゃうとあたしのパジャマとおそろい。
 うん、けっこう似合ってる。
 ピョコンと飛びだした尻尾が可愛らしい。

「さて、それじゃ寝る前に髪乾かさないとね」
「あっ、はい」

 ドライヤーを持って自分の部屋に向かう。
 紺野はそのあとをちょこちょこと着いてきた。

「じゃあほら、髪乾かしたげるから、おいで!」
「えっ……」

 部屋に着くと、あたしは先にベッドに座って紺野を呼ぶ。
 紺野は部屋の入り口で綺麗に固まった。
 あはっ、いちいち可愛いなぁ〜!

「で、でも!」
「い〜から、ほら、早く!!」
「じ、じゃあ失礼します……」

 ベッドをポンポン叩いて呼ぶと、ようやく紺野はあたしの前に座った。
 ドライヤーのスイッチを入れて温度を調節する。
 耳があるからちょっと弱めにして、そっと紺野の髪に当てる。

「大丈夫? 熱くない?」
「はい、大丈夫です! とっても気持ちいいです」
「そっか」

 そのまま紺野の髪を撫で続ける。
 ついでにやっぱり耳にもちょっとイタズラしたりして。
 しばらくすると、紺野の髪が乾いてきた。

「こんなもんかな?」
「はい! あっ、じゃあ今度は後藤さんの髪乾かしてあげます!」
「そう? じゃ、お願い」
「はい!!」

 紺野にドライヤーを渡すと、紺野は笑顔であたしの後ろにまわった。
 ニコニコととても嬉しそうで、こっちまで嬉しくなっちゃう。
 そっと紺野の手があたしの髪に触れ、温風が優しく当てられる。

「熱くないですか?」
「ん、へ〜き!」

 あ〜、なんかけっこう気持ちいいかも……。
 やってもらうことなんてなかったからなぁ。
 あたしは紺野に身を委ねる。


「はい、終わりました!」
「んあっ、ありがと。長いから大変だったでしょ?」
「そんなことないです。とっても綺麗な髪ですねぇ〜!」

 しばらくするとあたしの髪もサラッと乾いた。

「それじゃ、もう寝ようか?」
「はい!……あっ、そ、それじゃ私はソファーに……」
「ダ〜メ!」
「きゃうっ!!」

 部屋から走り出しそうな勢いの紺野の尻尾をムギュッと掴む。
 そのまま紺野をたぐり寄せ、ベッドの中に押し込んで、部屋の電気を消した。


「ご、後藤さ〜ん! やっぱり私ソファーで……」
「ダメ! 御主人様の命令!」
「で、でも……」
「ん〜? 御主人様に反抗するペットには"生きた抱き枕の刑"だ!!」

 あたしもベッドに潜り、紺野のことをギューッと抱きしめる。
 あはっ、やっぱりあったかい〜!

「ご、後藤さん!!」
「おやすみ〜、紺野」
「うぅ……」

 そんな声を出しながらも、紺野はもぞもぞとあたしにすり寄ってくる。
 あたしもそんな紺野をギュッと抱きしめる。

「後藤さん……?」
「ん〜?」
「ありがとうございます」
「別にお礼を言われるようなことはしてないけど?」

 意味はなんとなくわかってるけど、あえてとぼけてみる。
 紺野もそれはわかったみたいで、ちょっとだけクスッと笑った。

「それでも、ありがとうございます」
「ん〜」
「それじゃ、おやすみなさい、後藤さん」
「おやすみ、紺野」

 紺野が目を閉じたのがわかった。
 あたしもそっと目を閉じる。

 おやすみ、紺野。
 明日の朝目覚めたら、またあたしに笑顔を見せてね。


 紺野と一緒だと、何もない日常でもなぜか楽しくて。
 心がほわっとあったかくなってくる。
 そんな生活は、まだ始まったばかり……。






あとがき

もともとは後紺祭りで書いたものなんですが、このシチュエーションは美味しすぎる、と言うことで、あとの2話を追加してWeb拍手用にしてみました。
追加分はもう完全にごまこんがイチャついてるだけなんですが(笑
まぁ、猫になっても紺野は紺野ってことで(ぇ

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